第二章
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「それだといるかな」
「鮎がいるかどうかはわからないけれどね」
「魚位いるだろ」
「ほら、あそこに白鷺がいるし」
「それならね」
小川のほとりに一羽の白鷺がいた。それを見ての言葉である。
「何もいないのならそれを捕まえて食べる鳥だっていないし」
「絶対にいるよ」
「そうだね。ああ、何か」
「何か?」
「何かっていうと?」
「いや、こうした小川のすぐ傍にああした鳥がいるのも」
その白鷺も見てだ。隆は目を細めさせた言ったのである。
「風情があるね。絵になるよ」
「じゃあ写真を撮るかい?」
「そうする?」
「そうしようかな。デジカメもあるし」
言いながらだ。隆は早速懐からデジカメを出してきた。そうしてだ。
その小川と白鷺を撮ろうとする。しかしだった。
白鷺は急に飛び立ってしまった。それで何処かに行ってしまった。このことには隆も他の面々も残念そうな顔になってこう言ったのだった。
「何だよ、折角だったのに」
「今撮ろうとしたのにね」
「それで飛び去っていくっていうのは」
「残念だね」
「全くだよ。今ボタン押そうって思ったのに」
撮影しようとした隆が最も残念そうだった。
それでその残念さを顔に出して首を捻る。しかしだった。
その彼等の視界の中にだ。不意にだった。
子供の様な大きさで老人の顔をしている。髪の毛は一本もない。
しかし全身は黒く濃い毛で覆われている。何処か弁慶の退きに似た調子で跳ねながら彼等の視界の中に入って来た。それを見てだ。
隆の周りは首を傾げさせた。そしてこう言うのだった。
「猿?」
「そうじゃないかな」
「何か髪の毛はないけれどね」
「やっぱりそうじゃないかな」
「少し大きいけれどね」
猿にしてはだというのだ。それは雅道も同じだった。
それでだ。彼等は首を傾げさせながら言うのである。
「また変わった猿だね」
「ぴょんぴょんと左足で跳びはねてね」
「何か手の調子もお囃子みたいで」
「変わった猿もいるものだよ」
「あんな猿もいるんだね」
彼等はこう言うだけだった。しかしだ。
それを見た隆は目を瞠ってだ。こう彼等に言ったのだった。
「あっ、これはまずいよ」
「まずい?」
「まずいっていうと?」
「決してつられて笑ってはいけないよ」
こう仕事仲間の面々に告げたのである。
「いいね。絶対にね」
「つられて笑う?」
「あの猿に?」
「そうしたらいけないっていうのかい?」
「そう。何があってもね」
彼は真剣な顔で彼等に話す。
「そうしないと駄目だからね」
「いや、猿って笑うのかな」
「そんな人間みたい
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