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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十四話 信頼
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ると心が凍りそうです。ヴァレンシュタイン少佐の傍に常に寄り添い、その一部始終を監視していた……。少佐には私がどう見えたか……。自分の周りをうろつき、臭いを嗅ぎまわる薄汚い犬に見えたでしょう。一体少佐はどんな気持ちでいたのか……。
そしてあの時の少佐の目、蔑むような眼でした。人の情を理解しない女、筋金入りの情報部員、そんな眼でした……。私はこれまであんな眼で見られた事は有りません。でもこれからは常にそう見られるのでしょう。所詮は情報部の人間で本人がどう思っていようと危険な女なのだと……。
私はこれまで自分のしてきた事に罪悪感を感じずにいました。多分ヴァレンシュタイン少佐が感じさせずにいてくれたのだと思います。少佐は私に隔意なく接してくれました。あくまで補給担当部の同僚として接してくれたのです。だから私もあまり少佐を監視するという意識を持たずに済みました。
少佐は意地悪でサディストで、どうしようもない根性悪ですけど私の事を気遣ってくれたのだと思います。アルレスハイムでもフェザーンでも私は少佐と一緒にいる事を楽しむ事が出来ました。少佐が私を警戒していれば私はいやでも自分が監視者なのだと気付かされたはずです。楽しむなどと言う事は無かった……。
司令室の中は静寂に満ちています。先程までの緊張や興奮は有りません。私達の会話を聞いたのです、無理も無いでしょう。皆私とバグダッシュ少佐からは視線を逸らしています。
司令室が沈黙に支配される中、ヴァレンシュタイン少佐はスクリーンを見ていました。スクリーンには単座戦闘艇(スパルタニアン)に撃墜される単座戦闘艇(ワルキューレ)が映っています。一方的な展開です。基地までたどり着ける単座戦闘艇(ワルキューレ)は皆無に近いでしょう。
「バグダッシュ少佐」
私は小声で少佐に話しかけました。少佐が“どうした”というような視線で私を見ます。
「私はフェザーンの件を報告しませんでした。情報部はクビですか?」
クビでも構いません、味方まで疑うなんてうんざりです。後方勤務本部のほうが気が楽です。
「それは無い、私は中尉のした事が間違っているとは思わない」
「……」
思わず少佐の顔を見ました。冗談を言っているのではないようです。
「貴官のように監視者だと監視対象者に知られてしまうと、監視者としては余り役に立たない。相手が警戒し交流が無くなる、つまり情報は断片的にしか入ってこなくなるからだ。監視対象者がスパイであるか否かは関係無くね」
「……」
「だが貴官は違った。監視者だと知られてからもヴァレンシュタイン少佐との間に良好な関係を築いた。もちろん少佐が貴官を敵視しなかった事が大きいのだろうが、貴官も不必要に少佐を疑わなかったからだと思っている。おかげで我々は貴官を通して少佐の事を知る事が出
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