第三章
[8]前話
「私達あの時は最初から仲直りしたかったのよ」
「最初から?」
「そう。それでハーモニカの音はきっかけだったのよ」
「あの音を聴いて心が動いて」
「それで仲直りできたんだと思うわ」
これが真樹ちゃんのあの時についての考えでした。
「そうなったんだと思うわ」
「そうなの」
「ええ、多分だけれど」
「そういえばあの時私も」
「私と仲直りしたかったのよね」
「喧嘩したけれどそれでも」
こう真樹ちゃんに言います。前を見て少し俯いた感じの顔になって。
「そう思ってたわ」
「私もよ。だって私達友達だからね」
「ええ、だからよね」
「ハーモニカはその手引きをしてくれたのよ。そうだったのよ」
「それで私達はその手引きから仲良くなれた」
「そうだと思うわ」
真樹ちゃんはまた梓ちゃんに言いました。前を見たまま。
梓ちゃんも真樹ちゃんのその言葉を聞いてです。そうしてでした。
顔をあげてそのうえで。こう言いました。
「そうね。仲直りしたかったのよね」
「で、ハーモニカが後押しをしてくれたのよ」
「不思議な話ね。けれどね」
「ハーモニカっていいよね」
「凄くね。いいよね」
二人を後押ししてくれたハーモニカに深い感謝の気持ちも感じるのでした。例え仲直りしたいと思ってもきっかけがないとそうはできないからです。
だからこそこう言ってです。二人は夕方の街を歩いていきます。
そしてその中でまたです。あの音が聴こえてきました。
「あっ、あの時みたいに」
「誰かがまた仲直りするのね」
二人は遠くから聴こえてくるハーモニカの音を聴いて微笑みました。その音のする方に顔を向けて。
ハーモニカは夕方の街の中に響いていました。それは優しく誰かと誰かを仲直りさせるのでした。あの時の二人をそうした様に。
ハーモニカおじさん 完
2012・5・23
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