巻ノ八十三 仕置その六
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「治部殿で終わりじゃ」
「処刑は」
「だからわし等はそこまでいかぬ」
「そうなりますか」
「とはいっても今はそれは七分じゃな」
そうならない率はというのだ。
「まだ完全ではない」
「それを完全にされるのが」
「源三郎じゃ」
信之、彼だというのだ。
「これからあ奴が動く」
「必死にですな」
「内府殿に我等の命乞いをする」
「そしてそれによって」
「我等は助かる」
そうなるというのだ。
「確実にな」
「ここまで、ですな」
「わしは読んでおったしじゃ」
「読み通りですな」
「そうじゃ、しかしな」
「命が助かろうとも」
「我等は流罪となる」
このことは間違いないというのだ。
「どうしてもな」
「それは避けられませぬな」
「御主もそう思っていたであろう」
「はい」
幸村は父にすぐに答えた。
「やはりそれは」
「そうじゃな、ではな」
「時をですか」
「待つことじゃ」
流罪になっている間はというのだ。
「その間鍛錬と学問に励むとしよう」
「そうしてですか」
「時を待つ、よいな」
「わかり申した」
「その様にな」
「心を乱すことなく」
「よいか、如何に流罪の時が長くなろうともだ」
それでもというのだ。
「腐らず、諦めずにな」
「ずっとですな」
「鍛錬と学問に励んでじゃ」
「時を待つのですな」
「そうせよ、わしも同じじゃ」
昌幸自身もというのだ。
「そうして時を待つ」
「左様ですか」
「そして時が来ればな」
その時はというのだ。
「思う存分暴れるぞ」
「そうされますか」
「是非な」
「それでは」
幸村も応える、そして実際に信之は家康に懸命に言っていた。
「どうかです、父上と源次郎をです」
「死罪にせずにか」
「命だけはお助け下さい」
家康に頭を垂れて言うのだった。
「どうかお願い申す」
「ふむ、しかしじゃ」
家康はわかっていて信之に応えた。
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