巻ノ八十三 仕置その四
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「全く以て恐ろしい方であったわ」
「全くです、そして真田殿にも」
「我等はやられてきましたな」
「その軍略には」
「常に」
「武田は徳川の敵である家じゃ」
こう言うのだった。
「特に喜兵衛いや安房守殿はな」
「ですな、あの御仁は」
「とかく当家と因縁があります」
「何かあれば我等を散々に破る」
「そうした御仁ですな」
「村正の様な者じゃ」
家康は忌々しげにこうも言った、この刀に彼の祖父は殺され父も傷を負い彼の嫡男信康の介錯の刀でもあり彼自身たまたまとはいえ村正を手にして傷を負ったことがある。
「だからな」
「罪は重くしてですか」
「二度と世に出ぬ」
「そうされますか」
「そう考えておる」
「それがよいかと」
ここで天海が家康に言ってきた。
「実は今治部殿についた諸大名の星等を見て占ってもいますが」
「あの御仁はか」
「はい、徳川には従わず逆らう」
「そうした星の下にあるか」
「そう出ました、そしてご次男の源次郎殿も」
幸村、彼もというのだ。
「恐ろしいまでに強い力をお持ちですが」
「星はじゃな」
「徳川には従わぬ」
「そうしたものじゃな」
「ですから」
それ故にというのだ。
「あのお二人につきましては」
「あえて罪を重くして」
「何処かに流罪として押し込めておくべきかと」
「それがよいな」
「宇喜多殿は長くて十五年でいいかと」
彼についてはだ、天海もこう考えていた。
「一本気で邪心のない方なので」
「だからじゃな」
「おそらくご正室の実家の前田家から話がきますし」
「まあ十万石じゃな」
「それ位で復権させるべきかと」
「それが妥当じゃな」
「しかしです」
宇喜多はそれでいい、しかし昌幸と幸村はというのだ。
「どうしても徳川の下には入らず」
「それにじゃな」
「あまりにも強いお力を持たれています」
二人共そうだというのだ。
「ですから」
「ここはじゃな」
「はい、お二人はです」
「流罪にすべきか」
「高野山にでも」
かつて秀次が入れられたこの場所にというのだ。
「そうすればいいかと、しかし」
「それでもじゃな」
「お命までは奪わぬ」
「わしのその考えはじゃな」
「素晴らしきことです」
こう言って血を好まぬ家康の考えを讃えるのだった。
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