第五話:イレギュラー達と殺人鬼
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ラシャ兄!!昼飯行こうぜ、箒も居るんだ!!」
「おう」
ラシャは一夏と共に食堂へ向かった。道中、たくさんの女生徒が集まってきており、食堂に到着する頃にはある種のデモ行進のような様相を呈していた。当然、数少ない男性がついていた食卓の周辺には女子の人だかりが出来ており、食卓を囲んでいる唯一のじょしである篠ノ之箒には余すことなく嫉妬の視線が突き刺さっていた。
当の本人は意に介さぬばかりか、睨み返すほどの気骨を備えていたのが不幸中の幸いというべきか。唯一の憂慮点は彼女はラシャの事を昔から嫌っていた点であった。
彼女は、ラシャを視界に収めると、露骨に不機嫌な表情を浮かべた。十年ぶりに会った人間に対する反応にしては些か冷淡に見えた。
「そんな顔をするな箒ちゃん。飯は楽しく食うもんだぞ?」
ラシャが話しかけると、彼女はそっぽを向いた。
「おい、箒!……ごめんな、ラシャ兄。なんかこいつ朝から機嫌悪くて…」
一夏のフォローに、箒は慌てて反論する。
「別に私は…というか機嫌が悪いのは誰のせいだと…!!」
「気にしないよ、女の人ってのはそういう日があるもんだ。だから一夏も気をつけるんだぜ?」
ラシャはサンドイッチを頬張りながらにこやかに応える。同時に内心では箒が十年前より全く成長していないことに失望もしていた。
自らが一夏と親しい故に、嫉妬を隠そうともしない。未だに一夏を独占したい思考が先走って他者を排除しようとしたり、敵意を向けるのだ。結局身についたのは肉だけで、礼節や品性は小学生並みでしか無い。十年間必死でやって来たことは、チャンバラと花占い以外になにもないようなものだ。
一夏は佇まいからして、相応の成長を遂げたような印象を受けた。千冬から聞いた話だと、ラシャを見習って大学へ行くための資金を中学生の内から貯金するなどといった行動が見受けられ、学校の成績も上々なのだそうだ。
ただ、自らの鍛錬という名目で、学校行事を疎かにする傾向があり、友人も数えるほどしか居ないらしいのが玉に瑕といったところか。ラシャ自身も大して友人は多い方ではないが、頼れる存在は多いほうが良い。と、失踪していた日々を振り返り、一夏にアドバイスをすることを固く誓った。
「ところで、ラシャ兄。ラシャ兄は十年間何してたんだ?」
「それは言えないんだ。言ったら殺されるような事もしちゃったからね」
「え……?」
思わず一夏は箸を落とした。自らを見つめるラシャの瞳が爬虫類じみた光を放っていたからだ。
「冗談だよ。怪我が酷いから、治せる海外の病院に転院しただけだからな?」
「んだよラシャ兄!!びっくりしたじゃないかあ!!」
正直一夏はこれ以上踏み込みたくなかった。鮮明に思い出してしまうからだ。ラシ
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