第三話:真夜中の粛清
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の中にも彼に対して熱い視線を送っている輩も多いという、極めて不愉快な結果となっている。
「遅くまで生徒のご指導ですか、お疲れ様です」
その不愉快な用務員は、こちらが不愉快になるほどの爽やかな笑みを浮かべて、恭しく頭を下げる。この教員は、表情よりも、低姿勢な態度に注目していた。
「あら、女性への礼儀を間違えているのでは?今時そんな古臭いお世辞では女性一人落とせませんわよ?」
「これは失礼致しました。宜しければこの不肖めに先生の思い描く『いろは』をご教授願えませんか?」
えらく古臭い言い回しで、用務員は恭しく手を差し出した。妙なしゃべり方と用務員の制服でなければ、見事なダンスの誘い方だった。
「ええ、よろしくてよ。但し、授業料は高く付きましてよ?」
女性教員は用務員の手を取ってしまった。
「その前にこちらからも一つご指南をさせて頂こう」
「え?」
ガラリと纏う雰囲気が変わった用務員に一瞬女性教員は凍り付いたが、直ぐに握られた手を放そうとした。だが、彼の手はまるで溶接されてしまったかのように固く閉じられていた。
「なっ!?放しなさ…」
「年上は敬え」
刹那、見事な天地投げが決まり、女性教員は意識を無慈悲に刈り取られた。
暗闇は人間を狂わせる。世界が文字通り暗転し、慣れない感覚に全てを任せねばならないからだ。ラシャの眼前の拘束された女教師も、目隠しによる暗闇の洗礼を受け、恐怖に歯を鳴らしていた。
ラシャは女教師の怯えっぷりに満足感を抱くと、ボイスチェンジャーのスイッチを入れた。
「それでは語り合おう。君のお友達についてたっぷりと」
新しく支給されたおもちゃを弄びながら、ラシャは淡々と、然して表情は満面の喜色を浮かべながら告げた。
「こんなものか、10分も掛からずに全て吐くとはな。女権団も根性無しばかり送ってきて張り合いがない」
ラシャは苛立ちを隠そうともせずに報告書を仕上げていた。理由はもちろん、今回の語り合いが不完全燃焼に終わってしまったことだった。傍らには、改めて試そうと準備していたおもちゃが不満そうに立てかけてあった。
「『苦悶の梨』を知ってるか?」
ラシャは未だ背後にある椅子に拘束されている女教師に問いかけた。暗闇の中で耳を半分削がれた事に対するショックが大きかったのか、意識は朦朧としていた。だが、彼の声はよく聞こえていたらしい。少なくとも失禁するくらいの反応力は残っていたのだ。
「その筋の名工に作らせたのが昨日届いたんだけどな、今日使う予定だったんだよ。今日、な?君が耳を半分千切られただけで音を上げなければ今頃大活躍だったんだがなあ」
拷問用具を料理の食材のように紹介すると、ラシャはナイフを手にとっ
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