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殺人鬼inIS学園
第一話:用務員は殺人鬼
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ラスについた水滴でテーブルの上に「バカ」と何回も書く姿を見て、彼女がIS初代世界王者『ブリュンヒルデ』だと気付ける者は居るのだろうか。

「残念でしたね―…」

 千冬の言い分を聞いて真耶の表情も僅かに曇る。彼女が幹事を引き受けたのも彼の事を純粋によく知りたいという、邪念とは無縁の感情からくるものであった。

「ま〜や〜!!貴様ぁ、あんな奴の何処が良いんだァ!?」

「ちょっ!?先輩、ベロンベロンじゃないですか!そんなハイペースで呑んだら良くないですよ!?」

 いつの間にか絡み上戸と化した千冬に拘束された真耶。日付が変わっても教員たちのどんちゃん騒ぎは続いたという。



 翌日、昼下がりのIS学園の花壇にて二人の用務員が花壇の手入れを終えて一息ついていた。一人はIS学園の用務員兼理事長である轡木十蔵。もう一人は出張という名の暗殺劇から帰還した用務員である。二回り以上歳の離れたお互いの間には、緊張や遠慮というものが見られなく、良い上司と部下の間柄と言うよりは親子、或いは祖父と孫の様にも見えた。

「学園には慣れましたか?」

 老人が口を開く。声色、表情。共に労りと優しさにあふれていたが、その瞳は一切笑っておらず、無駄口を許さぬ色を秘めていた。

「ええ、初出張『万事事無く』」

 男も穏やかな表情と返事とは裏腹に、猛禽を思わせる瞳を返す。

「ふむ…帰りのおみやげは何にしたのです?」

「清酒一瓶」

 二人にしか分からない会話が続く。十蔵の瞳の中から凄みが消える。満足の行く結果であったようだ。

「それは結構、よい出張でしたようで…」

「はい、次の出張が『楽しみで仕方ないです』」

 十蔵の瞳が驚愕の色に染まった。眼前の男は、この綱渡りのような暗殺劇を明らかに愉しんでいた。この男と初めて出会ったことを思い出す。難癖をつけてきた過激な女尊男卑主義者を煮物のように『撹拌する』この男の笑顔は、年頃の男が想い人、若しくは娘に向けるが如き柔和な表情であった。

──破綻している。

 十蔵は目を細めた。そこから数瞬漏れ出た感情は男に対する不安であり、その男本人に首輪をかけることの出来た安堵でもあった。兎に角、今は労わねばならない。十蔵は一度表情を殺し、柔和な笑みを作った。

「ともかく、お勤めご苦労様でした。編田羅赦(あみだ らしゃ)用務員」

「はい、またご用命有ればお呼びください」

 羅赦は一礼すると帽子を目深にかぶり直し、備品点検のために校舎に戻った。後は静寂と思わぬ曲者を抱え込んだやも知れぬと、眉を顰める理事長だけが残った。


 備品点検の為に倉庫へ向かう羅赦。道中、見覚えのある顔に出会う。

「あ、織斑先生に山田先生。おはようございます」

「お
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