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殺人鬼inIS学園
第一話:用務員は殺人鬼
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を変えて来た千冬に対して、男が指差した先には期待に目を輝かせながら二人の様子を見守っている生徒数名だった。傍から見ればメロドラマに出てくる様な修羅場のようにも見えただろう。何せ役者は最強のIS乗りと噂の若い男性職員なのだ。千冬は言わずもがな、男の方も帽子を目深にかぶっているのでわかりづらいが顔自体は整っている方である。少なくとも画にはなった。

「……いつからだ?」

 男からの視界では、振り向いた千冬の表情は伺えない。だが、髪の隙間から見える耳の一部が真っ赤になっている時点で心中はお察し出来る有様であった。

「そこで何をしている!?出て行け!ISを背負わせてグラウンドを100周させるぞ!」

 千冬の上ずった怒鳴り声で、生徒達は黄色い声を上げて散り散りになる。少なくとも夕方には全校生徒に、翌朝までには全職員の耳に入り、噂の煙が立ち込めることになるであろう。

 数日経ち、ついに飲み会の日であり報告日が訪れた。男は作業服を脱ぎ、スーツに着替える。千冬は名残惜しそうに男の顔を見ながら後輩の教諭に引っ張られて行った。
 男もまた、苦笑いとともに一行を見送る。何人かの職員が熱い視線を投げかけるも、男は会釈だけ返すとコートの襟を正し、タクシーを呼び止めた。

「歓楽街までよろしくお願いします」

 歓楽街のアスファルトに足を下ろした男の表情からは、無害そうなほほ笑みは消え失せ、一切の表情を葬り去った能面のような無機質さを全面に押し出した無表情に変貌していた。報告会とは建前にすぎない。

「…」

 男はコートの胸ポケットに折りたたまれた写真を取り出す。それには一人の女性の退屈そうな表情が焼き付けられていた。女性権利団体急進派の幹部だ。元々は女性の社会進出や自立をサポートする団体なのであったが、ISの登場により女性そのものに特権階級的な権力を授け、男性は皆奴隷の如き卑しい存在として隷属させるという歪んだ思想に取り憑かれる者が現れた。その中心的存在が前述の急進派であり、その女なのだ。

排除せねば

 能面の内に僅かに笑みが浮かび、彼の心境を代弁するかのように指の関節が軽快に鳴った。

 女性権利団体急進派の幹部が一人、音連蓮(おとずれ れん)は高級レストランの個室の中で苛立ちの極みにあった。女性の権利を盤石なものにすべく活動を続けていたが、今期の女性権利団体の活動に織斑千冬が苦言を呈したばかりか、華のIS学園に男性職員が就職したのだ。
 IS産業に男性の影が射すだけで、音連の腸は煮えくりかえる思いだった。彼女にとってIS産業は「女性の、女性による、女性のためだけの産業」なのであり、彼女にとって異性の介入はまさしく染み一つ無い白布を土足で不躾に踏みにじられるがごとき事態なのだ。
 蟻の穴から堤が崩れる様に、この一人
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