第194話 洛陽哀歌
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を教えてください」
董卓は力無い声で正宗に聞いてきた。正宗はしばらく思案するが彼女に答えることにした。
「賈文和にはお前が死んだと伝えた。私は賈文和の助命の機会を与えた。私の元で董仲穎の夢を実現するために尽くせとな」
董卓は正宗が何故賈?に助命の機会を与えたか察した。正宗は賈?を試したのだ。董卓の志に強く惹かれ董卓の家臣になったのなら、投降の恥辱を甘んじても董卓の志を継ぐために正宗の手を取る可能性がある。それ程の人物なら正宗は殺すには惜しいと思ったのだ。正宗は自分の命を狙った賈?を許す機会を与えたのだ。
だが、賈?は正宗の手を取らなかった。あくまで賈?は董卓という人物への執着しかなかったということだ。賈?は董卓を天下人に祭り上げることを夢想し、その夢のために動いただけだ。董卓の志などどうでもいい。
正宗は賈?が段?の死を張遼達裏切り者の所為だと張遼を罵ったことは口にしなかった。
「賈文和は何と答えたのですか?」
「『あんたになんか従わない。あんたより董仲穎の方が天下に相応しい。ずっと相応しいのよ!』と私に答え助命の話を蹴った」
正宗は記憶を辿り一言一句間違えずに董卓に伝えた。彼にとって賈?との遣り取りは印象深かったのだろう。正宗と元同僚を口汚く罵った姿は鮮烈に正宗の記憶に焼き付いたに違いない。
「賈文和は処刑されたのですね」
「私が死罪を申しつけた」
「車騎将軍からの下命により苦しまずに斬首にて処刑しました。首を検められますか?」
揚羽は正宗と董卓の会話に割り込んできた。賈?の処刑を任された者として董卓に対して答えたのだろう。
「お願いいたします」
「分かりました。待っていてください」
揚羽は陣幕の外へ出て行く。彼女は直ぐに彼女の部下を一人伴い戻ってきた。正宗は揚羽と一緒に入ってきた人物に厳しい視線を向けた。中年の男だった。
「正宗様、この者のことはご安心ください。他言することはありません」
「信頼できるのか?」
「他言する前にこの者は自害して果てるでしょう。ですからご安心ください」
揚羽は淡々と正宗に答えた。その答えに正宗は沈黙した。揚羽は正宗の沈黙を肯定と見做し、揚羽の部下は正宗に頭を下げ董卓の前に進むと箱を置き、箱を包む黒布を解き素早く下がった。
「董仲穎、賈文和の首です。改められてください」
揚羽は感情の籠もらない事務的な態度で董卓に接した。
董卓は恐る恐る箱の蓋を取り中身を見て蓋を落としてしまった。彼女は震える手で箱の中身を再度見た。血で汚れた賈?の首がそこにあった。賈?の顔は傷や汚れは無かった。速やかに処刑されたのだろう。
董卓は瞳に再び涙を溜め込んでいた。必死に泣くのを堪えている様子だったが、堪えきれず涙が彼女の瞳から堰を切っ
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