第194話 洛陽哀歌
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に嘆願してきた。形式とはいえ首謀者であるお前を助命できない。だから、段忠明は賈文和と自分を生け贄にすることでお前だけは命だけでも救って欲しいと嘆願してきた」
正宗の告白は董卓には衝撃の事実であり辛すぎる事実だった。董卓は最期は親友である賈?とともに自害して果てることもやむなしと考えていた。だが、段?は董卓の命を救うため必死に奔走していた。そして、最期は戦場の露と消え、死しても逆賊として首を晒された。賈?も無事では無いと董卓は悟った。
「段忠明、張文遠、呂奉先。三名からお前の助命を嘆願された。私はお前を助命し保護する。ただし、董仲穎よ。お前には名前を捨ててもらう」
嗚咽を漏らす董卓に正宗は声をかけた。
「生きていけるわけがありません」
董卓は涙を流しながら正宗に訴えた。
「お前に死ぬ資格など無い。お前一人が死んで死んでいった者達の死を償えると思っているのか!」
正宗は厳しい表情で董卓を責めた。正宗は董卓の返事に怒っていた。段?は董卓の命を守るために大軍を相手に一歩も引かずに激烈な死を遂げたのだ。
「自害するというなら。何故戦いが始まる前に自害しなかった。段?は死を選ばずに済んだであろう!」
正宗は董卓に近づき怒鳴りつけた。董卓は正宗の剣幕に押され、涙を流しながら後ろに下がる。正宗は弱者をいたぶるような真似をしている自分に罪悪感を抱くが責任感から董卓を諭そうと思った。
「お前のために一角の武将達が恥も外聞も捨て私に膝を折りお前の助命と保護を嘆願してきたのだ。その意味がお前に分かるか? 三人達はお前に生きて欲しいと思ったのだ。命を賭してでもお前に生きて欲しい。その思いをお前は踏みにじるのか」
「私を救うために死んで欲しいなんて思ったことはありません」
董卓は涙を溜めた瞳ながら強い意志の籠もった目で正宗を見た。その態度に正宗は段?が自分の命をかけてでも彼女を守りたいと思った理由が分かった。
董卓は流されるように賈?の行動を追認した。だが、自らの破滅を前にしても自らの保身を図ろうとしない。その潔さは評価に値した。宦官達の浅ましい保身を見せつけられただけに董卓の態度は正宗の目に清々しく映った。賈?を側に近づけず、段?のような家臣を側におけば彼女は名君となりえただろう。段?もそう感じたに違いない。しかし、董卓はそうはしなかった。彼女には名君の器量が無かったということだ。
段?は董卓に夢を見た。彼女の死に様から武人として一本芯が通った人物であると思われる。生真面目な彼女は董卓への期待を捨てることができなかった。
「董仲穎、それを段?の首の前で言えるのか?」
董卓は正宗に指摘され何も言えずに視線を逸らした。沈黙する董卓に正宗は何も言わずに彼女を見守った。
「賈文和の最期
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