第194話 洛陽哀歌
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正宗は陣幕の入り口付近にいる見知らぬ五人の男女に視線を止めた。
「私の部下です」
怪訝な彼らを見る正宗に揚羽が答えた。
「何だ。あの手に持っている荷物は?」
正宗は揚羽の部下の一人が手に持つ黒布で包んだ箱に目が止まった。箱の大きさは首桶ほどの大きさだ。
「賈文和の首です、必要になるかもしれないと用意させました」
正宗は揚羽の説明に言葉を失っていた。揚羽は正宗の表情を見て小さく笑った。
「必要無ければそれで良いと思います。念のために用意させました」
「そうか」
たじろぐ正宗は揚羽にそれ以上何も言わずに陣幕に入っていく。揚羽も正宗に続いた。正宗が陣幕に入るとそこには一人の女の子が佇んでいた。一目見た正宗の印象は町娘の格好をした董卓だった。彼の知識と全く同じ容姿だったため、正宗は直ぐに董卓と気づくことができた。
「正宗様、董仲穎にございます」
揚羽は正宗の知識など知らないため、董卓に手を向けて彼女のことを紹介した。董卓は不安そうな表情で胸元に両掌を置き、正宗ことを窺うような目で見ていた。はかなく兎のような庇護欲をくすぐられるような董卓の容姿に正宗は沈黙してしまった。
「正宗様?」
揚羽が怪訝な表情で正宗を見ていた。これからきつい話をしなければいけないと思うと正宗の気持ちは憂鬱だった。揚羽は正宗の心境など気にすることなく、董卓に正宗のことを紹介した。
董卓は正宗に対して膝を折り拱手して頭を下げた。
「車騎将軍、この度は保護いただき感謝いたします」
董卓は頭を下げたまま正宗に礼を言った。
「礼にはおよばん。全ては貴殿への段忠明の献身によるものだ」
正宗は董卓に礼に対して頭を左右に振り、自分に対して恩に着ることはないと答えた。段?の名を聞いた董卓は身体を固くしていた。
「段忠明は車騎将軍に何を頼んだのでしょうか? 段忠明は無事なのでしょうか?」
董卓はいきなり顔を上げると正宗のことを見た。その様子から正宗は董卓が何も知らないことを理解した。視線を揚羽に移すと彼女は頷いた。揚羽の返事に正宗は一瞬逡巡するが、董卓に経緯を説明するのは段?に彼女を託された自分の役目であると感じ口を開いた。
「段忠明はお前の罪を全て背負い討ち死にした」
正宗は董卓の目を見て段?の死に様を伝えた。段?の悲惨な死に方を説明され董卓は打ちひしがれた様子だった。彼女は口元を右手で押さえ崩れるように膝をついた。
「どうしてですか? 私が助かってどうして静玖さん」
董卓は瞳に涙を溜め段?の死を悲しんでいた。彼女の瞳から玉のような涙が頬を伝って落ちる。
「段忠明は今回の戦いで自分達が敗北することを理解していた。彼女は戦いが始まる前にお前の助命を私
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