第194話 洛陽哀歌
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あった。
「真悠はよく頑張ったと思う。凪、お前もな」
正宗は凪の近づき彼女の左肩に手を置いた。凪は正宗対して恐縮していた。彼女は真悠にお膳立てをしてもらったと思っている様子だった。確かに董卓屋敷への急襲と敵陽動の手筈を整えたのは真悠だった。しかし、正宗は手柄を急くことなく役目を着実にこなした凪のことは十分に評価していた。
「揚羽、真悠の調略は見事だった」
「司馬の家名を使えば容易きことにございます」
揚羽は謙遜した様子で正宗に返答した。正宗は「そうか」と短く答え歩き出した。その後を揚羽と凪が着いてくる。
「例の人物は今何処にいる?」
「正宗様の陣幕に通しております」
正宗は揚羽の言葉に驚き、揚羽を見返した。
「私の陣幕だと」
「正宗様、貴方様の陣幕が最も安全にございます。今や天下に最も近い貴方様に無礼を働ける者など地上にはおりません」
揚羽は謀臣らしい含みある物言いで口元に笑みを浮かべ正宗に言った。
「先勝祝いを私の元に寄越す者がいるだろう」
「人払いをさせております。面会を拒否できない者には麗羽殿に対応していただいております。ご安心ください」
正宗は揚羽の説明を受けると納得した様子だった。
「張文遠と呂奉先達はどうしている」
「まずは正宗様が会うべきと考え彼らには各々の陣幕にて控えさせております」
「それで納得したのか?」
「納得も何も。必要なことであることは彼らは承知しております」
揚羽は真剣な表情で正宗に言った。張遼達も直ぐに董卓の安全を自分の目で確認したいことだろう。彼らが多大な物を犠牲してまで守った存在だ。だが、正宗の保護無くして董卓が生きていく術はない。正宗と董卓は直接の面識がない。互いに信頼関係とまではいかなくても信用できる関係を築く上で直接二人だけで対面する機会を設けることは重要なことだと彼らも理解したのだろう。正宗が董卓の存在を危険と見做せば、張遼達との約束を反故にすることも十分にあり得るからだ。
「張遼達をあまり不安にさせるな」
正宗は揚羽と張遼達との間に何かあったのではと察したのか揚羽に釘を刺すように言った。
「私は不安を煽るようなことは申しておりません。ただ立場を理解しなければ守れるものも守れなくなると忠告しただけにございます」
正宗は揚羽から視線を動かし前方を見ながらやれやれという表情で正宗の陣幕へ向かって歩き出した。
正宗の陣幕に正宗達が到着すると、凪は外で警備につくと正宗に告げ、陣幕内には正宗と揚羽の二人が入って言った。陣幕の外にいる兵士達は凪の部下達で固められていた。本来は正宗の近衛兵士達で警備されるはずだが、陣幕の中にいる人物のことを考慮して、この人選が取られたのだろう。
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