二章 追いつかない進化 - 飽食の町マーシア -
第25話 五体復活(2)
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と還した。
地面が揺れるたびに、町長の「ヒエッ」という声が聞こえた。
うろたえ続ける町長をよそに、黒ローブの男二人は落ち着いていた。
「全然通用しないようだな。強さが違い過ぎる」
「そうですな。どうなっているのかはわかりませんが、あの強さは人間のものではありません。見かけどおり、ドラゴンそのものであるようにも感じます」
まるで他人事のように、そう評論した。
「何呑気なことを言っている! もっとアンデッドを呼び出せ!」
慌てて増援を要求する町長。
「無理だ。ここにもうこれ以上の上級アンデッドはいない」
「では下位種でもいい! まだいるはずだろ! どんどん出せ!」
すでに白骨化しているために表情はないが、口調や身振り手振りで必死さをアピールしている。
しかし――。
「いや、もうこれ以上は無駄なだけだ。我々は撤退する」
男二人の反応は、冷めたものだった。
「で、では……わ、私も行く!」
「いや、撤退するのは我々だけだ。お前はここで最後まで戦え」
「い、嫌だ! 私も逃げるんだ」
「駄目だ。お前は連れて行くわけにはいかない。戦って死ね」
「……」
突き放された町長は……
……不気味に笑い出した。
完全に白骨化している肩が、上下に震えている。
手に持っていた剣が硬い地面の上に落ち、土にしては高く乾いた音を立てた。
「い、いやだ……。私はやっと自由になったんだ……。私はこれからやりたいことがたくさんある。ここで終わるわけにはいかない。私は生きている……そしてこれからも生き続ける……。この先も生きるかどうか、これから何をするのか、すべてこの私が決める……お前たちなどに決めさせはしない。ドラゴンよ……お前もそうだ。お前にも決めさせない……なぜお前は私と戦う? なぜ私の邪魔をする? なぜだ? 私のこの体がうらやましいのか? そうだ……お前もこの体にしてもらえばいい……そうすれば……お前も……仲間になれば……この町を二人で自由に――」
絶望がすぎて錯乱したのか、意味不明なことを言っている町長。
シドウはそれを見て、突進を躊躇した。
これを殺して…………いいのだろうか?
あらためて、そう考えてしまった。
アンデッドは生物ではない。生態系から外れる歪な存在だ。それは間違いない。
本来であれば、倒して土に還してあげたほうがいい。
しかし……。
通常はアンデッド化すると生前の自我もなくなる。
だがどういうわけか、目の前のアンデッド化町長の精神は生前のまま。
そしてもう、明らかに戦意もなくなっている。
そのような相手を、自分の判断で勝手に「処刑する」というのは……本当に問題がないのだろうか?
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