第三章
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「ですからそうした場合も」
「逃げられますか」
「そうします」
実際にだ。彼はその場合も想定していた。
それで何時でも逃げる心構えをしていた。だが、だった。
美人はその彼に微笑んでだ。こう告げたのである。
「ご安心下さい。私はです」
「暴力もドラッグもですね」
「そして悪質なこともしません」
美人局やボッタクリの類もないというのだ。繁華街の裏にはよくあることも。
「真の。最高の快楽をです」
「俺に紹介してくれるんですか」
「はい、そうです」
まさにだ。それをだというのだ。
「ですから御安心下さい」
「真の快楽ですか」
「一度それを知れば離れられなくなります」
美人は思わせぶりな笑みになっていた。そしてその笑みで。
小泉の目を覗き込んで言ってくる。その覗き込みはまるで夜の世界の住人が獲物を魅了するかの様だった。そしてその魅了に対して。
小泉は受けることにした。それでだった。
美人に本当についていくことにした。やがて案内されたのは。
ホテルだtった。そういうことに使うホテルだ。ついでに言えば小泉もよく使うホテルだ。
その外見は西洋の宮殿か城を合わせた様な十階はある建物の前に来てだ。美人は言ってきた。
「ではここで」
「真の快楽をですね」
「二人で味わいましょう」
美人からの言葉である。
「そうされますか」
「喜んで」
色事師としてだ。小泉も返す。
「そうさせてもらいます」
「では。入りましょう」
「実はですね」
不敵、いや余裕のある笑みでだ。小泉も美人に言う。
「このホテルのことは俺も知っていまして」
「ではどの部屋がいいかもですね」
「はい、知っています」
共に快楽を味わうのならばだとだ。こう返してみせたのだ。
そのうえでだ。あらためて美人に言う。
「ではここからは俺が案内させてもらいます」
「その部屋まで、ですね」
「空いているかどうかわかりませんが」
目当ての部屋が空いていないなら別の部屋にする、そう心の中で決めながらだった。
美人をホテルの中にエスコートした。ロビーは狭く正直ロビーになっていない。目の前には部屋のパネルが映し出されている。その中でだ。
十階のある部屋が空いているのを見つけてだ。彼はこう美人に言った。
「この部屋がいいです」
「そこですか」
「はい、この部屋にしましょう」
「確かこの部屋は」
美人も知っている感じだった。この返事は。
「あれでしたね。このホテルで一番いい部屋でしたね」
「はい、そうです」
ラブホテルの部屋にもランクがある。その部屋はだというのだ。
「だからです。貴女の為に」
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