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第八十三話 大きな誤算なのです。
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なずいたウィトゲンシュティン中将が報告書を受け取って大切そうに自分のファイルに入れ、指紋認証装置でロックした。ヤンは敬礼を捧げてから、部屋を出ようとしたが、急に振り返って、
「あまりご無理をなさるのはどうかと思いますよ。」
「ありがとう。」
少し咳交じりだがしっかりした声で応えたウィトゲンシュティン中将は、スタッフたちに
「申し訳ないけれど、少し仮眠をとるわ。」
と、言って奥の自室に消えていった。
「おめでたい人ね。」
20代後半の青い冷たい瞳、金髪をポニーテールにした女性がそっけなく言った。クレアーナ・ヴェルクレネード准将という。ヴェルクレネード准将は帝国からの亡命者ぞろいの第十三艦隊の中で珍しく生粋の自由惑星同盟軍人であった。しかもその先祖はあのアーレ・ハイネセンの長征に加わった16万人の中にいるという、いわば自由惑星同盟の建国の名門の家柄であった。だからこそなのか、普段の第十三艦隊の面々とあまり親しく交わろうとしなかったし、どこか距離を置いて一線を画している態度を取り続けていた。
「そのような言い方、慎んでもらえますか?ウィトゲンシュティン中将があまりお身体がよろしくないという事をあなたも知っているでしょう!」
もう一人、女性士官の中でもホープと言われているカレン・シンクレア准将がきつい言い方でたしなめた。くっきりとした黒い目、線の強い眉、つややかな黒髪をポニーテールにしている白皙の人だ。彼女とヴェルクレネード准将は士官学校の「美貌の双璧」として有名であったし、シンクレア准将もまた自由惑星同盟の生粋の家柄であったが、二人は悉く対立していて仲が悪かった。その一端にはシンクレア准将の母親が帝国からの亡命者であるという事が大きな要因であったかもしれない。親孝行の彼女はあまり体が丈夫でなく内気な母親の面倒をよく見ていた。
「艦隊司令官は病身では勤まらない。そのことを誰よりもわかっていなくてはならないのは司令官本人。そしてその周囲の幕僚たち。皆イエスマンになってしまっては組織としての機能は立ち行かなくなる。誰かが歯止め役にならなくてはならない。」
「それは、私たちが間違っていてあなた一人が正しいのだという事?」
ヴェルクレネード准将は何も言わずにプイとその場を離れてしまった。
「あの子、どういうつもりなの!?」
シンクレア准将もまた彼女を追って外に飛び出していった。幕僚たちはやれやれというように顔を見合わせ、しばらくはワイワイと雑談の花が咲いた。むろん話題になっているのはあの二人の事である。シンクレア准将とヴェルクレネード准将の対立はこのように日常茶飯事だったが、それがこと戦場に立つと互いを意識しすぎるのか、どちらも功績をたてようと奮闘し、良い結果を生み出し続けている。この点は旧イゼルローン要塞における駐留艦隊と要塞の双方司令官の不仲
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