突撃!!聞かん自慢。
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高級士官専用のラウンジのゼー・アドラーでは、諸提督たちが集まって盃を交わしていた。自由惑星同盟を退け、大きな会戦もなく、ほっと一息が付ける休息期間だったのだ。
そんな中、何ともなしに各々の艦隊の話から、その旗艦の話に移っていったのは自然なことであったのかもしれない。なんといっても旗艦はその指揮官とまさに運命を共にする共同体だったからである。
「やはり旗艦はいいな!!」
ビッテンフェルトが例によって大声で叫び散らす。
「ケーニス・ティーゲルはまさに俺好みだ!!あの機動性と火力は俺にぴったりだと思わんか!?それにあのフォルム、すらっとしているようで野性味と威圧を秘めているフォルムは俺は好きだ!!」
隣に座っていたワーレンがうるさそうに顔をしかめ、
「あぁ、まさに卿にふさわしい艦だな。ティーゲル(虎)ではなくエーバー(イノシシ)とでもかえたらどうだ。」
「何だと!?そういう卿の旗艦などはサラマンドルという大層な名前があるが、地味な卿には名前負けしているんじゃないか?!」
「何を!?」
「よさないか!!卿ら!!」
ミッターマイヤーがたしなめた。
「どんな形であれ、閣下がお与えくださった旗艦は、卿らの個性に応じたものであると俺は思う。誰しもが万能である必要はない。それぞれの個性に応じた戦い方をすれば、いいのではないか。」
ロイエンタールが諭すと、ビッテンフェルトもワーレンも怒りを静め、すまなかったなとお互いに言い合って席に座った。
「とはいえ、やはり旗艦を持つとなると、どうしてもアレンジしたくはなりませんか?内装とか。」
「何だって!?」
フィオーナやティアナはともかくとしてその言葉がミュラーから出てきたことに一同は戸惑った。そういえばこの若い提督にはのちの鉄壁ミュラーのほかにもう一つ異名があった。それは物件探しが好きなことから「引っ越しミュラー」と奉られているのである。フィオーナは夫のこの癖についてはある程度認めつつも、二つの条件を付けていた。一つ、絶対に引越ししない本宅を設けること、二つ、引っ越しは最低でも半年我慢すること、である。これを聞いたときティアナは腹を抱えて笑い、イルーナも微笑を浮かべたものだった。
「内装ですよ。そう艦の内装を派手に入れ替えはできませんから、こう、ちょっと気軽に手直しできる部分を直したりしています。もちろん自前です。」
「卿がか?ほう、卿がそういった大工仕事ができるとは意外だったな。」
ルッツが感心したように言う。
「はぁ、何しろ私の家は9人兄弟で貧乏でしたから、家のことは大概自分たちでやっておりました。私はもっぱら料理と大工仕事を任されていましたので。」
なるほど、一人一部屋といかなかった幼少期の反動が今のミュラーの趣味を作り上げたのだなと諸提督は声に出さなかったものの全員が納得した顔だった。
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