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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十三話 兵は詭道なり
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き上げないのでしょうか?」
「敵の指揮官はリューネブルク准将だ。簡単には引き上げられんだろうな」
バグダッシュ少佐が何処か同情するような口調で答えました。
「彼にとってはこれが浮かび上がるチャンスだ。何とかして物にしたい、そう思っているだろう。ヴァレンシュタイン少佐はそれを上手く利用している。本当なら戦略爆撃航空団を使えば簡単に地上部隊を叩き潰せたんだからな」
「酷いですね、そんな弄ぶような事をしなくても……。何故ヴァレンシュタイン少佐は戦略爆撃航空団を使わないのでしょう」
「さあ、何故かな。俺にもわからん」
ヴァレンシュタイン少佐を見ました。少佐は司令部のスクリーンを見ています。私の視線に気付いたのでしょうか、こちらを見ました。慌てて視線を外しましたけど少佐は何かを感じたようです。私のところに歩いてきます。拙いです、思わず身体が強張りました……。
宇宙暦 794年 4月 6日 ヴァンフリート4=2 エーリッヒ・ヴァレンシュタイン
サアヤとバグダッシュが俺を見ている。何となく非難するような視線だ。俺のやる事に文句でもあるらしい、俺が視線を向けると顔を背けやがった。話でも聞いてやるか……。
「何か聞きたい事でも有りますか?」
「あ、いえ、その」
「ああ、ヴァレンシュタイン少佐、その、何故、戦略爆撃航空団を使わないのかと思ってね」
「そうです、これじゃまるで弄んでいるみたいです」
しどろもどろで答えてきた。つまり俺が酷い人間だと言いたいわけか……。分かっているのか、こいつら……。俺達がやっているのは戦争だって事が。
「帝国軍が可哀想だとでも?」
「そうは言いません。ただ、あの地獄を何時まで続けるんです?」
サアヤがスクリーンを見た。スクリーンには宙に舞う帝国軍兵士が映っている。これがサアヤの言う地獄か・・・・・・、ただの戦闘だろう、こんなもの!
「地獄ですか、これが……」
「ええ、そう思います」
「甘いですね、本当の地獄はこんなものじゃありませんよ」
サアヤとバグダッシュが怯えたような表情で俺を見ている。そうだろうな、今の俺は多分どうしようもないほど怒っているに違いない。
「私は第五次イゼルローン要塞攻略戦に参加しました。あの戦いは酷かった。同盟軍の並行追撃作戦を潰すために帝国軍は味方もろとも同盟軍を攻撃した。戦闘終了後、要塞内は味方の攻撃で負傷した人間で一杯でした……」
「……」
「私の周りは血の臭いで充満していましたよ。あの独特な鼻を突く臭い……。腕の無い人間、足の無い人間、火傷をした人間、そんな人間が周りにゴロゴロしていたんです……。悲鳴、怒声、呻き声、泣き声、そして怨嗟……。“何故味方を撃つんだ”、“こんな死に方をしたくない”、声が出ている間は生きてい
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