第6章 『八神はやて』
第51話 ハヤテのごとく!
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テ。もしかしたら『闇の書』が再来するかもしれないんだ。管理局全体で取り組まないと、だから――」
「だから――なに?」
言葉をつづけようとして、口をつぐむ。微笑を浮かべる少女に、気おされて、それ以上何もいえなかった。口調も変わっており、何より、目が全く笑っていなかった。
「『闇の書』事件は、私のお義父さんが解決済み。『夜天の書』なんて誰も知らない。そうよね?」
「そう、だよ。だからこそ、早めに万全の対策が――」
「もう一度言うけれど、対策なら私がやっておくから、安心して。貴方は、黙って私に任せればいい。そうよね、ユーノ?」
「え、でも――」
「ユーノ、貴方とはこれからも、いい『お友達』でいたいの。あまり私を失望させないで」
なおも反駁しようとするが、できなかった。ハヤテが発する膨大な魔力と殺気が、ユーノを締め上げる。
彼にできることは、黙って彼女に従うことだけだった。
「『闇の書』を解決する英雄は、ギル・グレアムだけでいい。もう一度くるなら、今度こそ私とお義父さんで、引導を渡せばいいだけ」
帰り際に、独り言をつぶやく姿は、狂気じみていた――と、のちに司書長は語るのだった。
◆
ジェイル・スカリエッティ事件――通称JS事件は、史実通り機動6課の活躍により解決された。
部隊長は、ハヤテ・Y・グレアム。
彼女は、ユーノが予測した『闇の書』の再来に備えて、極秘裏に戦力を集めていた。ところが、結局、『闇の書』は現れず、預言の内容も再度変わってしまい、彼女の準備は無駄になる――はずだった。
しかし、カリムが、新たな預言によって、管理局の危機に備える必要があった。そのために、集めた戦力を転用することにしたのだ。
その戦力こそが、機動6課である。
提督は、海の所属であり、機動6課は、地上部隊の管轄である。それなのに、なぜ、ハヤテは、部隊長になったのか。
彼女を英雄扱いする人々は、預言に備えて、念願の提督の地位を捨ててまで、地上部隊に移った。と、口々に賞賛した。
しかしながら、真実を知る者たちは、皆口をつぐんでいた。なぜなら、
「せっかく、地上部隊に移ったのに、また海で提督をやらされるなんて――――義父さんに会えないじゃない!」
――単に、ファザコンを拗らせただけだったからだ。
提督に就任からたった1年で、彼女は、音をあげた。
別に、仕事が辛かったわけではない。提督は、長期任務が多く、数か月家に帰れないこともないことも、ざらだった。
だからこそ、直に家族に会えなくなったファザコンにとっては地獄だったのだろう。カリムの預言を聞いてから、あっという間に、機動6課を設立し、地上本部に移ってしまった。
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