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フロンティアを駆け抜けて
ホウエンの怪物
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だから」
「ダイバ君のお父様が一番上に……じゃあ、さっきの大きな音ってダイバ君のお父様に何かあったんじゃ!?」
「かもね……」

 それだけ言うとダイバはさっさと部屋を出ていこうとする。ジェムは慌てて止めた。さっきの音はかなり高くから聞こえた。最上階かどうかはわからないが、ダイバの父親の傍で何かがあったのではないかと考えるのが自然だった。

「待って! ……ダイバ君は、心配じゃないの?」
「さっきも言ったけど、パパは邪魔するやつがいたら全員叩き潰す。だから僕らが心配することじゃない」

 ダイバは本気で言っていた。それだけ自分の父親を信頼、あるいは畏れているのだろう。仮に昨日までのジェムがチャンピオンである父親が危ないと聞かされたら、自分もお父様なら大丈夫だと何の疑いもなく言ったかもしれない。

「ううん、心配することだよ。勿論私にはダイバ君のお父様がどれだけすごい人かまだわかってないけど……ホウエンの怪物なんて呼ばれてたって、本当に何でもできるわけじゃないよ。本当に何でもできちゃうなら、私たちが挑戦したって絶対勝てないでしょ?」
「……」

 ダイバが黙る。これで父親なら問題ないと言ってしまうのは、自分がここに挑戦する理由を否定するのと同じだからだ。

「万が一にでも何かあったら、ダイバ君はお父様に勝つチャンスがなくなっちゃうんだよ。……それが嫌だから、ダイバ君は弱い私と一緒にバトルしてまで勝ちに来たんだよね?」

 ダイバにまだジェムは弱いと思われている。それを利用してでもジェムはダイバに父親を案じてほしかった。今までの自分のように、ただ盲信するだけの子供でいてほしくはなかったからだ。ここまで行ったとき、再びバトルタワー全体に激震が走った。


「………………そうだね。わざわざ君の手を使ってまで勝ちに来たのにその前にパパに倒れられたら困る」


 沈黙の後、ダイバは部屋から出ようとした足を止め、上を仰ぎ見る。素直じゃない言葉だったけど、それでも上にいく気にはなってくれたようだ。メタグロスをボールから出してその上に乗り、『電磁浮遊』で音もなくすっと移動し始める。このバトルフィールドの先、上の階へと。

「うん、絶対二人であなたのお父様とお母様に勝とうね! そのためにも……行くよラティ!!」

 ジェムもボールからラティアスを出し、その背中に乗って一緒に上へと昇る。時折激しい衝撃音に包まれるバトルタワーで何が起こっているかを確かめるために、ダイバにも彼なりの家族への答えを見つけてもらうために――
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