ケッコン協奏曲 〜赤城〜
5-β.あなたの声を響かせたくて
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のだが……こんなに平和な朝を迎えたのは、なんだか随分久々のような気がする。それだけ昨日の体験がショッキングだったのか……ともあれ、鎮守府は平和だ。
お味噌汁をすすりながら、窓の景色を眺める。海が朝日を反射して、キラキラと美しく輝いている。空は雲一つない晴天。……素晴らしい。なんと美しい世界か。こんな美しい海を守り通し、今後は深海棲艦さんたちと力を合わせ、再びこの海を守っていくことが出来る……そんな喜びが、私の胸を支配した。
景色のずっと遠くの方に、船影が見える。恐らくは、この鎮守府に観光に訪れる陸上型深海棲艦さんたちが乗った船だ。かつて私たちが死力を尽くして戦った相手にして、今では私たちの心強い仲間。今ではたくさんの深海棲艦さんたちが、この鎮守府を通して人間の社会を訪れてくれる。そしてこの鎮守府は今、平和の象徴となっている……そのことが、私にはとても誇らしい。
「……アカギ」
私が窓の外を感慨深く眺めていたときだった。私の大切なバトルジャンキー仲間、ロドニーさんの呼びかけが聞こえた。
「ぁあロドニーさん、おはようございます」
私はいつものように、ロドニーさんに朝の挨拶を交わし、彼女と視線をあわせる。彼女はいつものように、朝食が乗ったお盆を右手に持ち、彼女専用のお櫃を左手で抱えていた。
「……同席して、よろしいか?」
「はいどうぞ」
「……い、いいのか?」
んん?
「はい。構いませんが?」
「……では、失礼する」
ロドニーさんはそう言うと、静かにお盆とお櫃を静かにテーブルの上に乗せ、私の向かいの席に静かに座った。いつもなら、お櫃を『ふんッ』とか言ってどすんって置くのに……?
「差し向かい……だな」
「はぁ……」
なんかロドニーさんの様子がおかしい気が……まぁいいか。先日の帰国騒動のこともあるし、何かあればちゃんと話をしてくれるだろう。別に元気がないというわけでもないようですし。
私の余計な心配をよそに、ロドニーさんは静々とご飯を食べ始める。
「……」
「……」
いつになく口数が少ない。無言でご飯を食べていて、私とロドニーさんを、気まずい沈黙が襲う。
「……」
「……」
しかもちょっと気になるのが、彼女のご飯の食べ方だ。いつもなら、決して下品ではないが……割と大きな口を開けて、一口一口がばっとご飯を口に運び、お漬物を豪快にバリバリとかじり、熱いお茶をずずずっと飲んでいた彼女だったはずだが。
今日の彼女はまったく違った。口を小さく開け、ご飯を少量ずつ口に運んでいる。お茶も両手で上品に飲み、お漬物も品よく手で受け、パリパリと上品な音を立てて食している。
「……あのー」
「?」
「……何かあったんですか?」
「え……
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