ケッコン協奏曲 〜赤城〜
5-β.あなたの声を響かせたくて
[4/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
のせいで、聞いた者のテンションが強制的に激減するのかもしれない。
「えー……みんなちょっとひどすぎじゃない? おれはみんなの提督よ?」
「ひどすぎもクソも、テンションだだ下がりになったのは間違いないクマ」
「そうですね……」
「うん。なんか……あれだけ『天龍二世大好き!!』て思ってた気持ちも、なんか落ち着いてきたな……」
恐るべき提督の『やる気スイッチオフ』能力。まさかここまで効果てきめんだとは思ってもなかった……。これはもう、才能や個人の能力という範疇を飛び越えた、ある意味では戦略兵器にも匹敵するものではないだろうか。戦地に提督を送り込んだ場合、戦闘中の兵士たちのやる気が一気に減退して、どちらにも勝敗がつかない状態で戦闘が終了しそうだ。
『だって引き金ひくのめんどくさいんだもん。砲撃? だるいよ……』
『いいじゃないもう戦わなくて……みんなでボイコットしちゃおうよ……』
『俺たちじゃなくても誰かが戦ってくれるよ……知らんけど』
『つーか向こうだって戦いたくないって……知らんけど』
とか言いながら戦闘をボイコットする兵士たちで溢れかえる、ある意味平和な戦場を反射的に想像した。もしそれが本当だとしたら……提督はこの世界に真の平和をもたらせる貴重な人材ということになる。
「まぁ、チケットいらんのなら、無理にとはいわんよ? 知らんけど」
でもそれって、なんだかものすごーく嫌な形の世界平和だけど。愛ではなく、慈しみでもない……ただただ争いのない世界……差別もなく、殺戮も犯罪もない理想郷……だがそこに競争や喜び、人間的な感情は何もなく、ただただ『めんどくさい』と『知らんけど』が蔓延した、怠惰で無責任でやる気ゼロな世界……
「んじゃ大淀、浮いた分で明日俺と一緒に行く?」
「はい。お供いたします」
唯一……その戦略兵器クラスの能力に抵抗できる可能性があるのは……提督を慕っている大淀さんぐらいか……あの人はなんでやる気が萎えないんだろう? やはり愛の力ですかね。
「提督?」
「ん? どしたの球磨?」
「話は終わったクマ?」
「うん」
「なら球磨たちはさっさと帰るクマ」
「うん」
「提督、おやすみだクマー……」
「では私も失礼して。おやすみなさい」
「はいおやすみー」
あれだけまっピンクに染まっていた面々が、今は完全にやる気を失って、我先にと自分の部屋に戻っていく……この作戦を立案したのは私だが、その予想以上の効果に空恐ろしくなった。
「これが……これが私達の提督……!!」
「コワイカ……」
『……』
私は、何かとんでもない光景に立ち会ってしまったのではないか……甚大な破壊力を持つ兵器を開発してしまった科学者の気持ちって、ひょっとしたらこんな気持ちなのかもしれ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ