二章 追いつかない進化 - 飽食の町マーシア -
第23話 失うこと
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くなった。
「我々のところに五人の暗殺者が来ました。全員縛って尋問させて頂きましたが、素直に『町長の命令で暗殺に来た』とおっしゃっていましたよ? あ、もちろん五人は殺さずに町のお役人のかたに引き渡しましたので。助命と引き換えに、今頃あなたのことを全部しゃべって下さっているでしょう。どうぞご心配なく」
アランの説明。
舌打ちが二つ、庭に響いた。
町長と、その後ろの人物のものである。
「失敗したのか。使えない奴らだ」
町長は口調を一変させ、そのように吐き捨てた。
* * *
シドウは、アランがしゃべっているのを半歩引いた位置で見守っていた。
暗殺者五人からは話を聞いていたが、この場で町長の反応を見て、あらためて落胆した。
やはりそうだったのか――と。
思えば、不自然な点がまったくなかったわけではない。
毎日治療所に見舞いに来るような熱心な町長が、町に起きている問題を放置していること。
最も問題解決のために機能していなければならないはずの聖堂に、町から予算が配分されておらず、欠員も補充されないままになっていたということ。
町長に問題を解決する意思があれば、そんなことにはならないはずだ。
「まったく、いい人に見せかけて大悪人だったとはねー」
ティアが腰に手を当て、ため息をつく。
「ふふ。私は最初からわかっていました……町長に何かあるのではないかとね。なぜなら私は――」
「優れているからです? 気持ちわるっ。というかそれ嘘でしょ? そんなこと一言も言ってなかったじゃない」
「ふむ。バレては仕方ないですね」
「……」
ティアは肩をすくめる。
「まー町長さん、このあとわたしたちの後ろにいる人たちに捕まって、めでたく牢にぶち込まれてちょうだい。あ、でもその前に、シドウから聞きたいことがあるそうよ?」
ティアはシドウに話を振ってきた。
町長は「シドウ? ああ、その少年の名だったな」とつぶやきながら、視線をスライドさせる。
シドウは一歩前に出て、口を開いた。
「はい。町長さんが裏で何をされていたのかは五人から聞いているのですが、いったいなぜそのようなことをされてきたのかな? と思いまして」
尋問した五人は、過去に聖堂のベテラン薬師暗殺にも関わっていたことを自白していた。そしてそれを指示したのも、この町長だったとのことだった。
それも加味して考えれば、町長は問題解決のために何もする気がないというよりも、もっと強く、問題解決させてはならない≠ニいう考えだったことになる。
この町長がそこまでしなければならなかった動機が、シドウにはさっぱりわからなかったのだ。
「町長さんは足を失くされて
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