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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十二話 ヴァンフリート星域の会戦
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うろうろされて同盟軍に撃破されては叶わない、そう思ってこのヴァンフリート4=2に送った。詰まる所は厄介払いです」
「……」

「彼の配下にはリューネブルク准将がいるのですよ、ヴァーンシャッフェ大佐」
「リューネブルク……」
ヴァーンシャッフェ大佐が呻き声を上げました。私もバグダッシュ少佐も驚いています。フィッツシモンズ中尉も蒼白になっています。シェーンコップ中佐から聞いているのでしょう。

この基地に着任した時、少佐はシェーンコップ中佐と話していました。リューネブルク准将がこの基地を攻めに来るかどうか、賭けようと。そして少佐はリューネブルク准将がこのヴァンフリート4=2に来ると言っていた……。

「彼は亡命してから三年、一度も戦場に出ていません。言ってみれば飼い殺しです。しかしこのヴァンフリート4=2でようやく武勲をあげる機会を得た。必ず陸戦隊を率いて攻めてきます」
「……」

「そこを叩くのです。地上部隊を叩き、艦隊を叩く。そのためには味方の増援が必要です」
誰も口を開こうとしません。少佐の声だけが聞こえます。ヴァレンシュタイン少佐が薄っすらと頬に笑みを浮かべました。例の怖いと思わせる笑みです。

「ミュッケンベルガー元帥は致命的な過ちを犯しました」
「……過ちですか?」
バグダッシュ少佐が問いかけるとヴァレンシュタイン少佐は無言で頷きました。

「グリンメルスハウゼン子爵は確かに無能で役に立たない、しかし何の価値も無いというわけではない。ある意味、グリンメルスハウゼン子爵ほど重要人物はいません。私なら彼を身近に置きます。間違っても単独にはしない」
「……」
少佐の言う意味が私には分かりません、皆も訝しげな表情をしています。

「彼は皇帝の信頼が厚いのですよ。その人物を見殺しにすればミュッケンベルガー元帥は周囲になんと言われるか……。そしてあの艦隊にはラインハルト・フォン・ミューゼル准将もいます。彼の姉は皇帝の寵姫、グリューネワルト伯爵夫人です」
「……」

「彼らを死なせればミュッケンベルガー元帥は皇帝に対し二重に失態を犯した事になる。ミュッケンベルガー元帥は必ず此処へ来ます。必ず彼らを助けようとする、そこを撃つ!」
「……」

ようやく分かりました。少佐が帝国軍の艦隊編制と将官以上のリストを要求したわけが。少佐は誰が帝国軍の弱点になるのかを知ろうとしていたのです。そしてその弱点が少佐の下に飛び込んできた……。

偶然なのでしょうか、それとも少佐は最初から分かっていたのでしょうか。アルレスハイムのときも同じ疑問を持ちました。少佐は他の人とは何処か違います、天賦の才とかではなく、何かが違う。何か違和感を感じさせるのです。バグダッシュ少佐の顔は青褪めています。おそらく私も似たようなものでしょう。

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