第五章
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「あれっ、どうしました御老人」
「何かありますか?」
「いや、わしはあの戦争の時は列車砲部隊にいたんだよ」
あの頃と比べると皺だらけになった顔でだ。彼は西ドイツ軍から統一ドイツ軍に所属が変わった兵士達に話したのである。
「その頃は列車砲こそが一番だと思っていたんだがな」
「それがですか」
「変わったというんですね」
「これだけのミサイルやロケットがあればもう列車砲なぞいらない」
運搬にも組み立てにも攻撃準備にも多大な時間と労力がかかり尚且つだ。
線路上でしか使えない列車砲と比べてミサイルやロケットランチャーはというのだ。
「時代は変わったな。列車砲もあの戦争が最後だったからな」
「まあ今は使いませんね」
「統一ドイツ軍にもないですよ」
「そうだな。本当に時代は変わった」
ヘッケンは遠い目になって述べた。
「もう列車砲はいらない。一両もな」
こう言うのだった。彼は寂しさを感じながら言った。ミサイルもロケットもかなりある。そして砲も。しかしそこに列車砲はおろか巨砲は一つもなかった。彼はその今のドイツ軍、再び一つになったドイツ軍を見てこう言ったのである。
エンジェルクライ 完
2012・5・27
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