ケッコン協奏曲 〜赤城〜
4-β.キミだけのヤル気スイッチ
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「あらそお? ありがと。んじゃお礼に間宮のチケットあげるから、明日クリームあんみつでも食べて来なさいな」
一瞬にして呪縛が解けた。
あんなに魅力的でたくましく見えた提督が、途端に見るも冴えない加齢臭のキツい中年男に戻り、私の愛情メーターが一気にマイナスまで振り切れた。
「て、提督……」
「ん?」
「お礼をいいます……おかげで、正気に戻れました」
「どういたしまして」
これか。私が提督を待ち望んでいた理由はこれだったのか。いくら鎮守府がまっピンクに染まったとしても……どれだけ艦娘のみんなが色めきだったとしても……提督の無気力かつ、中年男性特有の、何事にもめんどくさそうに接する腰の重さ、そしてなによりその死んだ眼差し……すべてが、強制的に周囲の人間の意識をフラットにしていく。……私が提督を待ち望んでいた理由が、今やっとわかった。
その後……私は大淀さんが見守る中、四人がいない間にこの鎮守府に起こった恐るべきショッキングピンクな事態の事情聴取を受けた。
「ったく……なんで私たちがこんなことを……」
「つべこべ言わず運べ戦艦棲姫……」
「お前たちと手を組んだのは、ピンク色のアオバを運ぶためじゃないぞ……」
「私だって日本に来たのは、ピンク色のアオバを運ぶためじゃないのに……」
「「はぁ〜〜……」」
気絶した青葉さんは、ロドニーさんと戦艦棲姫さんが運んでいった。二人はぶつくさ文句を言いながら、気持ちよさそうに伸びている青葉さんを二人で支え、彼女の部屋へと連れて行った。
「……んじゃ、この二週間、実はみんな色めきだっていた……と?」
「そうです。大淀さんと提督をケッコンさせるために」
「ふーん……」
提督の尋問に対し、私は嘘偽りなく、隠し事もなしですべてを答えていく。すべてはこのイレギュラーな事態を収束させるため。元の健全な鎮守府に戻すためだ。
提督は、私の回答の一つ一つを、相変わらずの死んだ魚の眼差しで受け止めていた。そんな眼差しで私を見ているものだから、提督が私の話を本気で信じているのかイマイチ読めない。
大淀さんに目をやる。
「……ほら、あと数発でいっぱいになりますから」
『……♪』
彼女は砲台子鬼さんを抱っこして、その砲塔からBB弾を補給してもらっていた。私の回答は全く耳に届いていないようだ。彼女に自覚がないので仕方ないのだが……なんだかその様子が他人事のように見えて腹立たしい。『あなたは事態の中心に近いんですよ!!!』そう言いたくなる腹立たしさだ。
……なんだかむかっ腹がたってきた。この人たちのせいで私はまっピンクなみんなに襲撃され、まっピンクな青葉さんに迫られ……そしてまっピンクに染まり、一時は青葉さんとのケッコンを覚悟したというのに
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