第7章 聖戦
第164話 虚無と五路侵攻
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魔法の力と言うモノはそう言う類の力なのだから。
「まぁ、売りさばかれた贖宥状を持っているから神に救われ、持っていないから救われる事はない、などと言うけち臭い神様よりは、悪行に塗れていない限り、すべての人間は救済される運命にある。そう言う考え方の方がマシ。
大いなる神の意志を、人の行い……例えば教会に寄進を行う事などで変える事など初めから出来はしない」
そう人々に思わせる方が後々、都合が良い。少なくとも、金を持っていればどのような悪行に塗れて居ようが救われる、では人は容易く楽な方向に流れて行って仕舞うから。
そもそも、どう言う意図で、最初に贖宥状を売りさばく事が是とされたのか、その辺りが謎なのだが……。これではどう考えても、悪行に塗れてでも現世で富を手に入れた者が勝つ。そう言う形となり、返って自分たちの統治に悪影響を与えるようになると思うのだが。
まぁ、その辺りはてっとり早く金を稼げたらそれで良い的な思考だったと考えるべきでしょう。
何にしても――
これであからさまに怪しい、歴史の彼方から一気に時間を跳び越えて現われたブリミルの後継者たちに対して、ほんの少しでも影を落とす事が出来れば良い。
……この程度の策謀。
もっとも、相手もブリミル教に対する信仰心を利用した術式。多くの信者が、ブリミルが虚無と言う魔法を操って居たのは知っていたのだが、その魔法を行使出来る術者はそれ以降、歴史の表面に現われる事はなかった。しかし、今、教皇が聖地奪還の為に聖戦の発議をした時に、奇しくもその歴史の彼方から虚無を操る担い手が現われた。これは神が聖戦の開始を支持している証拠である。……と言う論法の基礎の部分と成っているはず。
其処に少なくない疑念と言う物を混じり込ませられれば、俺の目論み以上の成果が出て来る可能性もある。
そう、俺の記憶に間違いがなければ、この世界では少なくともオスマン老やノートルダム学院長が生きている間に虚無に魅入られた人間が現われた事はなかった。
確かに両者とも実際の年齢は分からない。……が、しかし、少なくともノートルダム学院長に関してはジョゼフが俺と同じ年頃からあのままの姿で居たはず。
つまり彼女は、最低でも二十年ほど前から見た目年齢が六十代だと言う事。
オスマン老に至っては、実際の年齢が三百歳だと言う話が、トリステインの魔法学院では実しやかに流れていた。
その老師たちが知る限り虚無魔法を行使する人間が現われた事がない、と断言している以上、虚無に魅入られた人間が少なくともここ五十年。もしかすると百年近くは誕生した事がない、と考えても問題はない――
――そう考えて、少し首を横に振る俺。
いや違うな。俺の考えでは、この世界に虚無の担い手が現われたのは今回が初めてのはずだと考えている、が
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