外伝
外伝『雷禍と凍漣〜竜具を介して心に問う』
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おやかな表情だけは崩さなかった。つい、数刻前の公判で、『とある戦姫』のあるまじき非礼な言動の数々に、エレオノーラは怒りを爆発させるところだった。ようやく銀閃の竜をなだめたばかりなのに、凍漣の竜と雷禍の竜まで暴れられたら、口から何を吹くか分かったものではない。
――火中の栗は、ライトメリッツに拾わせるべきかと――
まったく……余計な事を言ってくれたものである。
(エレンも、ミラも、リーザも、こういう直情的な性格は微笑ましいけれど、わたくしとしては、もう少し大人になってほしいものだわ)
きっと、サーシャもそう心から願っているはずだ。
20歳にして、戦姫の中で年長組にはいるソフィーの人格は、慈性にあふれ、その懐が深い。話題を反らす為にも、援護射撃を頼むにしても、ソフィーは二人を別の話題に引き込んだ。
「ところで、二人は何か大事なお話があるんじゃなかったの?」
別の話題というよりか、むしろこれが本題だった。元々ミラとリーザ二人だけだったのだが、ソフィーの相席はサーシャの言葉を伝えるだけの、オマケに過ぎない。金色の髪の戦姫は目的を既に果たしている。
「そうでしたわ。リュドミラ=ルリエ、貴女に訪ねたいことがありましてよ」
「奇遇ね。エリザヴェータ。私もあなたに聞きたいことがあるのよ」
両者、呼吸をおいて――
「エレオノーラ=ヴィルターリアの弱点を教えてくれるかしら?」「テナルディエ公爵について、知っている情報を教えて頂戴」
いきなりこじれた。ソフィーは嗜んでいた紅茶を吹きこぼしそうになった。極白のドレスが浸みになったら目も光も当てられない。
突然の物言いに、エリザヴェータとリュドミラは眉を潜めながらも、律儀に回答する。
「テナルディエ公爵について知っている情報は、貴女とさほど変わりませんことよ」
「エレオノーラに弱点なんかないわ!それでも聞きたいなら……」
まるで、意思を重ね合わせるかのように、異口同音で言い放つ。
――――竜具を介して直接訪ねるまで!!――
合点招致となった二人は、あっさりと『力』による和解を求めたのだ。
「いいでしょう!リュドミラ!貴女がそうおっしゃるのでしたら!」
凶悪な笑みがぶつかり合う。凍漣と雷禍の化学反応で水蒸気爆発が起きるんじゃないか。そう思わせる一触即発の雰囲気。
「決まりね!」
不敵に笑い返す。その吊り上がった凶悪な笑みは、氷刃の鋭さを印象付ける。
リュドミラとエリザヴェータの取り決めに、光華はやけになる。
「どうしてそうなるのよ!?」
竜具を介して心に問う。穿った解釈にソフィーはげんなりする。
二人の沈静化を見るのは、当分先になりそうである。
◇◇◇◇◇
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