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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十一話 トラブルメーカー達
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か禍々しさを感じさせる笑みです。思わず隣に居たバグダッシュ少佐と顔を見合わせました。少佐も驚いています。

「もっと楽しくなりますよ、中佐。遠征軍の中にヘルマン・フォン・リューネブルク准将の名前が有りました」
「まさか、リューネブルク……」
シェーンコップ中佐が呻くようにその名前を口にしました。

第十一代ローゼンリッター連隊長リューネブルクは帝国に逆亡命した人物です。歴代連隊長十二人のうち同盟を裏切って帝国に亡命した連隊長は六名……、その一人がヘルマン・フォン・リューネブルク……。

シェーンコップ中佐にとっては許せる相手ではありません。リューネブルク准将が亡命した所為でローゼンリッターは軍上層部から危険視される事になったのです。不倶戴天の敵という言葉はまさに彼らのために有ると言っていいでしょう。

「そう、リューネブルク准将です。懐かしいでしょう、中佐。彼が此処を攻めてくれば楽しくなりますね。賭けましょうか、リューネブルク准将がこの基地を攻めに来るかどうか」
「……」

ヴァレンシュタイン少佐が笑みを浮かべつつシェーンコップ中佐に話し続けます。シェーンコップ中佐の顔には先程まで有った笑みは今では有りません。
「私はこのヴァンフリート4=2に彼が来ると思います。そのためにこの武器を用意しました。中佐、せいぜいもてなして上げて下さい」

「……なるほど、そうしましょう」
シェーンコップ中佐が笑みを浮かべて答えましたがヴァレンシュタイン少佐は中佐から関心を無くしたかのように今度は視線をポプラン少尉達に向けました。

「ポプラン少尉、貴官を此処に呼んだのは私です」
「……」
「理由はただ一つ、貴官が優れたパイロットだから」
「それはどうも」

ヴァレンシュタイン少佐が笑みを浮かべながらポプラン少尉に話しかけています。ポプラン少尉はちょっと引き気味です。今の少佐の笑みは何処と無く怖い……。

「貴官がどうしようもないトラブルメーカーで女好きでも全然構わない、敵の戦闘艇を叩き落してくれるのであればね。私が必要とするのは貴官のパイロットとしての才能であって貴官の人間性や人格ではない」
「……」

「貴官が戦死しても構いません、誰も悲しみませんからね。トラブルメーカーが居なくなったと皆、喜んでくれるでしょう」

酷い言い方です。ポプラン少尉の顔が引き攣っています。それでも小声で抗議しました。
「俺が居なくなったらハイネセンで俺を待ってる女たちが……」

「安心してください。彼女達は直ぐに新しい恋人を見つけますよ。もしかするともう見つけてるかもしれませんが……」
ポプラン少尉を絶句させるとヴァレンシュタイン少佐は保管庫から立ち去りました。私はバグダッシュ少佐と顔を見合わせ、その後を追いました。


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