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暑いせいで
第二章
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「この状況は」
「いや、これ位でいいのではないか」
 王はこれまでのあまりもの暑さを知っていたのでこう大臣に答えた。
「かえってのう」
「王はそう思われてもです。あまりに寒過ぎ」
 それに加えてだと。大臣はさらに言う。
「そして暑い中から急に寒くなったのです。その急な変化により多くの者が身体を壊してしまったのです」
「ううむ。そうだったのか」
「王よ、確かに涼しくなることはいいことです」
 少なくとも暑過ぎるよりはいいことだ。このことは間違いない。
 しかし大臣はそれと共にだというのだ。彼が言いたいことはそれだった。
「それが過ぎると。そしてそれがあまりにも急だと」
「かえってよくないか」
「そうなります。ですからここは」
「わかった。余はそれ程感じぬが民達が違うのなら違う」
 王は自分本位で考える人物ではなかった。あくまで民を基準に考える。そうした意味ではこの王はよい王だった。
 そのよい王だからこそだった。王は決断を下した。
「魔術はかなり緩めよ」
「はい」
「より緩やかで穏やかな術にするように」
 これまでの強いものにするなというのだ。
「氷も減らす。氷よりもじゃ」
「何にされますか」
「水じゃ」
 王は氷の様な極端に寒いものからそれに替えることにした。水にだ。
「水なら氷や雪程極端に冷たくはない。しかも農業にも使える」
「ではこれからは水ですか」
「それを増やすとしよう。ではこれでよいな」
「御意」
 大臣は王の考えに確かな笑みで応えた。こうしてだった。
 この国は氷が減り水が増えた。それによって農業も豊かになった。しかしそれだけでは終わらなかった。
 ただでさえ多かった水がより増え周囲に池ができた。その池の周囲に多くの果物が自然になったのだ。おそらくは水を飲みに来た鳥が種を運んで。
そこに果物の木々を植えさせた。それがそのまま果樹園となった。水が思わぬ状況を作り出したのである。
 王はそれを見て思わず唸った。そのうえでこう言った。
「ただ氷で冷やすよりも水を増やした方がいいのだな」
「そうですね。私もこれにはです」
 王に諌言したあの大臣も王と同じく唸っていた。そのうえで玉座にいる王にこう言った。
「正直驚いています。氷よりも水なのですjね」
「氷は確かに冷やすがな」
「あまりに冷やし過ぎてしまいます」
「そうだな。冷やし過ぎかえって民を害する」
 実際に民達に風邪をひかせてしまった。王にとっては反省するしかないことだった。
 だが水ではどうか。王が今言うのはこのことだった。
「しかし水は違うな」
「適度に冷やしそのうえで」
「多くの恵みをもたらすな」
「これまでも水に
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