第三章
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私達は向かい合ったままだった。そして私の方から彼に言った。
「ロマンス、作っていくのね」
「結婚してそれからもな」
「そうね。じゃあ今から早速ね」
「泳ぐか?今から」
「そうする?二人で」
「一人でロマンスなんて作れないだろ」
彼は微笑んで私に言ってきた。
「だからな」
「二人で一緒に泳いでね」
「ロマンス作るか」
「そうしましょう」
「よし、それじゃあ今からな」
私達は二人同時に立ち上がった。そのうえで。
海に入った。海の水はとても冷たかった。その冷たい海の中で私は笑ってこうしたことを彼に対して言った。
「今は二人だけれどね」
「まさかと思うけれどな」
「まだいないから」
ビキニから出ている自分のお腹に左手をやって言った。海の中で。
「安心してね」
「出来婚かと思ったよ」
「別にそうなってもいいでしょ」
「それはそうだけれどな」
「けれど本当にまだだから」
「そうか。それでもだよな」
「二人だけじゃなくてね」
私は笑顔で言っていく。腰から下は海の中だ。彼もまた。
「何時かは三人になって」
「一緒に海に行くか」
「そうしましょう。子供は何人がいいかしら」
「多ければ多いっていうけれどな」
「じゃあ三人?」
「それ位がいいかもな」
私達は海の中でロマンスを作りながら笑顔で話した。その時は子供なんてずっと先のことだと思っていた。
けれど結婚してすぐに。ほんの数年の間に。
まずは男の子の双子、それから女の子が続いて三人。しかもそれから。
また一人男の子ができた。あっという間に六人の子持ちになった私達は下手なコンサート会場より賑やかになった家、何とか入ることができた彼、今は主人と書いていい立場になった彼に対して苦笑いでこう言った。
「ロマンスって何かしら」
「何だそれ食い物か?」
夫も少し疲れた苦笑いで返してくる。
「フランス料理か?」
「違うみたいよ」
「じゃあどうでもいいな。で、今度の日曜な」
「テーマパークね」
「子供達連れて行くからな」
「ええ、わかってるわ」
六人の子供達全員をだ。テーマパークに連れて行く。そこにはロマンスなんて何処にもなくて修羅場しかない。文字通りの。
「前の海も凄かったけれどね」
「六人だからな」
ちょっとでも目を離すと。
「誰が何処に行くのか見るだけでもな」
「大変だからね」
「テーマパークの次は動物園だからな」
「子供達へのサービスばかりね」
「結婚してもロマンスとか言ってたけれどな」
「そんなの全然ないわね」
私達はテレビを観たりトランプをしたりしてはしゃぎ回る子供達に囲まれて話す。
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