暁 〜小説投稿サイト〜
自然地理ドラゴン
二章 追いつかない進化 - 飽食の町マーシア -
第21話 若き薬師
[3/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
。まあ私もそれで足を失った一人ではあります」
「あ、やっぱりそうでしたか。申し訳ありません」

 町長の足がない理由について、シドウは薄々わかってはいたが、無礼だと思い直接聞こうとは思っていなかった。
 あたかも誘導してしまったかのようになってしまい、シドウは少々慌てた。

「いえいえ、よいのです……。それで、薬師には何か相談をされるということなのですか?」

「はい。自分たちは今のところ、この現象は呪いや魔法の類ではなく、病気だと考えています。なので、この聖堂や薬師の方々が現在どう考えていて、どこまで研究されているのかを確かめたいなと」
「それはそれは……。よその方々にそこまで心配していただいて大変恐縮です」

 何かあれば私にも遠慮なくおっしゃって下さい――。
 町長はそう言って去っていった。



「僕がこの治療所に出入りしている薬師の責任者です。トーマスと言います」

 応接室でそう自己紹介してきたのは、おかっぱ頭の少年だった。
 薬師なのでタリス教の僧侶ではないと思われるのだが、足下くらいまで丈のあるダブダブの僧衣を着けていた。おそらく、聖堂の職員と服装を統一することになっているのだろう。

 その僧衣は濃紺を基調としており、中央には十字の印が入っていた。
 タリス教の僧衣の色は階級を表しており、偉い順に白・青・濃紺・黒となっている。この少年は責任者ということもあり、一般の僧侶よりは高い位の待遇となっているようだ。

 彼の顔は……丸い。体もぽっちゃりしている。
 が、それ以上に、とにかく若いことが印象的だ。まだあどけなさが残っている。
 シドウ、ティア、アランの三人は、そんな彼が責任者と聞いて顔を見合わせてしまったが、すぐに挨拶を返して自己紹介を済ませた。

「ずいぶん若いね? シドウと一緒くらいじゃない?」
「俺と一緒くらいなら、ティアとも一緒くらいということだよね。なんで俺の名前だけ出すの」
「うふふっ」

 ティアに引き続き、アランも興味深そうに彼の若さに触れていく。

「その若さで責任者ということは、相当に優秀な薬師さんなのでしょうね……。まるで十代のころから天才魔法使いと言われていた私のようです」
「アランの場合は『自称』でしょ」
「ふふふふ」

 だがそこで、トーマス少年は意外なことを言いだした。

「いえ、僕はどちらかと言うと落ちこぼれでした。でも前任の責任者や他の経験豊富な薬師がいなくなって、残っているのは僕より若い人ばっかりで……。仕方なく責任者をやっている感じです」

 また三人で顔を見合わせてしまう。

「あの……。前の責任者や、あなたより年上の他の薬師は……なぜいなくなったのか、聞いても問題ないですか」

 シドウは恐る恐る、そう聞
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ