二章 追いつかない進化 - 飽食の町マーシア -
第21話 若き薬師
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何もしない。
ケガが治らない人間をただ寝かせておき、「治らない」と嘆いている状態。それはシドウには理解できないことだった。
「ふむふむ……しかし、そうは言いますが、肥満が病気につながるという確実な証拠はありませんよね。
しかもシドウくんの考え方もかなり独特なのですよ?
『肥満は自然界の掟に逆らっている状態なので、何か問題が起きてもおかしくない』
なんていう発想は、普通の人間にはありません。
『他の町と比較すれば』という考え方もどうでしょうかね? 学者でもない限り、そのような考えはしないように思います」
「うーん……。でも、例えば薬師などであれば、何か気づいて調べていてもおかしくはないと思うのですが」
「薬師が全員研究熱心とは限りませんし、仮に熱心であっても研究の時間があるとは限りませんよ。上から言われない限りは、日々の仕事で精いっぱいかもしれませんしね」
「そういうものですか?」
アランは「案外そういうものです」と言って、寄りかかった体を起こした。
そして一つの提案をした。
「でも、一度しっかりと薬師に話を聞いてみるのは悪くなさそうですね。明日また聖堂に行ってみてはいかがですか?」
* * *
翌日。
三人は、ふたたび治療所に向かった。
「また順調に首を突っ込んでるね!」
ティアはそう茶化していたが、やはりシドウとしては、このまま何もしないのは気持ちが悪かった。
なお、アランは正式なパーティメンバーではないのだが、ついてきてくれていた。彼はたまたまこの町に用事があり、たまたまこの町行きの馬車で一緒になった冒険者――のはずなのだが。
時間を潰してしまっても大丈夫なの? というティアの問いには、
「大丈夫。私の用事は大したものではありませんから」
とだけ答えていた。
「町長さん。おはようございます」
聖堂に入ると、入り口のホールで車椅子姿の町長と再会した。また入院者の見舞いをしていたのだろうか。
「おお、おはようございます」
この日も町長は、しっかり者の雰囲気を醸し出していた。中央で横分けされた髪、綺麗に剃られたヒゲ、ビシッと決まった服装。相変わらずである。
車椅子を押している若い肥満男も、前日と同じ人物だった。世話役として固定されているのかもしれない。
「お三方は今日なぜ聖堂に?」
「はい。薬師の方に少しお話をお伺いしようかなと」
聞かれたので正直に答えたのだが、町長は元々刻まれていた眉間の皺を一層深くし、やや怪訝な顔をした。
「薬師? それはいったいなぜ?」
「この町の方々は、手足のケガが治りませんよね? 下手をすればそのまま壊死してしまうと聞いています」
「そうですね
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