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歌集「春雪花」
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 想いても

  凍てつく風に

    吹き消され

 残りしは痛む

     恋心かな



 春も近しいとは言えど、夜風は未だこの身に凍みる…。

 夜の闇に彼を想っても…この凍てつく風に掻き消されるようだ…。


 そうして後に残ったものは…胸の痛みだけだった…。



 落つる雪の

  静けく逝かば

   暁の

 夜を分かつとて

    音もなかりき



 夜明け前…はらりと雪が舞う…。

 三月も終わりの名残雪は…ただただ静かに落ち行き静かに消えて逝く…。

 そうして朝の幽かな光が、不確かな街の輪郭を浮き上がらせ始める…。

 全ては静かだ…夜と朝を隔てる暁も…消えて逝く雪も…。


 彼の記憶から…こうして私も消えて逝くのだろうか…。

 ただ静かに…音もなく…。




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