ケッコン協奏曲 〜赤城〜
5.五人に幸あれ
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、それを受け取る提督。提督に受話器を渡した大淀さんの左手には……
「……んー?」
……まぁいいか。指摘するのは野暮ってものだ。二人は幸せな結末を迎えた。それでいいじゃないか。
フと、電さんと目が合った。電さんも大淀さんの左手に気付いたらしく、私と目が合った途端、『気付いたのです?』と私に目で語りかけていた。
「電さん」
「はいなのです」
「ふふ……」
「へへ……」
とてもやわらかい、彼女らしい満面の笑みを浮かべる電さん。つられて私の顔も緩む。胸が温かい。人の幸せって、温かいなぁ。
「はぁ……承知しました。ではこれで……」
提督が電話の受話器を置いた。時計を見ると朝10時。そろそろ電さんたちが朝の遠征任務に出る時間だ。
「それじゃあそろそろ行くのです! 大淀さん!!」
「はい! それじゃあ私も準備しなきゃ」
今回は大淀さんも出撃する。ただ遠征任務といっても、今はシーレーンを通って資材を持ち帰ってくるだけの輸送任務だ。敵に遭遇することもなければ、戦闘が起こることもない。ドラム缶に資材を目一杯積み込んで、それをひきずって帰ってくるだけの、体力勝負ではあるが簡単な任務だ。
大淀さんが自身の席から立ち上がり、入り口に向かおうとする。
「大淀」
そんな大淀さんに、提督が声をかけた。死んだ魚の眼差しが、いつになく、まっすぐと大淀さんを見つめていた。
「はい?」
「気をつけてくれよ?」
「大丈夫ですよ。電さんや天龍さん、深海棲艦の皆さんもついてくれてますし」
そんな提督の、死んだ魚の真っ直ぐな眼差しに答える大淀さんの眼差しもまた柔らかく、そして、ほっぺたが少し赤く染まっていた。
「だから、て……」
「ん?」
「……んーん。あなたも書類仕事、ちゃんと片付けてくださいね。イツキさん」
「ん……」
あら。これはまた……昨日の今日であさっぱらから……。今まで気づかなかったのだが、大淀さんをよく見てみたら……頭からちょっと大きめのハートが一個だけ、ぽややんと浮かんでいた。
大淀さんはそのまま電さんと共に、執務室を出て行った。その道すがら、二人の楽しそうな会話が聞こえてくる。
「集積地さんは?」
「電のお嫁さんはまだ寝てるのです……」
「あら……でもかわいい旦那様で……」
「天龍さんは先に港で……」
そんな二人の楽しそうな会話は、パタンというドアの音とともに、聞こえなくなった。
「提督?」
「ん?」
「おめでとうございます」
「……ありがと」
みんなには……別に、まだ伝えなくていいか。青葉さんがそのうち二人のことに気づくし、そうすれば勝手にみんなにも広まるだろう。なにより、これは私からではなくて、提督と大淀さ
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