二章 追いつかない進化 - 飽食の町マーシア -
第20話 病?
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と言って退室してしまった。
シドウは慌てて上半身を起こし、「あ、ちょっと――」と言うが、彼女の姿は消えてしまった。
「怒らせてしまいましたかね?」
「いえ、そういうわけではないと思いますが」
「?」
「……やっぱり色々駄目なようですね」
アランがそう言いながら少し笑うと、また右手でシドウの亜麻色の髪をくしゃくしゃといじる。
よくわからないシドウは髪をいじられたまま、体を起こしたついでということで、フロア内を確認することにした。
寝ていてもわかったが、あらためて天井が高いと感じる。
広さもあり、ベッドがたくさん……三列で六台ずつ、合計十八台置いてある。
町の建物は薄い黄土色のレンガで出来ているものが多かったが、この治療所は灰色の石造りのようだ。
柱も角ばっておらず円柱状で、いかにも聖堂の一部という雰囲気である。
そして。
置かれているベッドは、全部埋まっていた。
隣のベッドに誰か寝ているというのは先ほどから気づいていた。なので、きっと自分以外にもケガ人がいるのだろうとは思っていたが……。
満員御礼になっているのは予想外だった。
「あの、アランさん。さっきの戦いは、もしかして結構な被害が出たんですか?」
「いえ。被害は上級冒険者の誰かさんだけでしたよ」
髪をいじる手を止め、微笑みながらアランがそう答える。
ではどうしてここはケガ人だらけなのか?
混乱しているのが顔に出ていたのだろう。アランが説明してきた。
「ここにいる方々は、前回の襲撃や前々回の襲撃で負傷された方々です」
「――!? どういう……ことでしょう……?」
ここは回復魔法を使う僧侶がいる治療所である。なのに過去のケガ人がまだ寝ているというのは、いったいどういうことなのか?
そう思って聞いたシドウだったが、アランは笑顔を消し、黙って首を振った。
すでに事情は聞いているが、ここでは言いづらい。そうアピールしていた。
空気を察し、それ以上突っ込まないようにしようとしたシドウだったが――。
「この町の人間は、ケガをすると治らないのさ」
その声は、隣のベッドに寝ている肥満体型の中年冒険者からだった。
彼は、左足の包帯をわざわざ取り、素足を見せてきた。
「……!」
シドウは絶句し、固まってしまった。
彼の足は、指先から炭化したように、黒く変色していたのだ。
ちょうどそこでトイレから帰ってきたティアが、
「あー、それが治らないって言ってたケガなんだね……」
と言った。
「ああ。この町の人間はな、みんな手足にケガをすると、回復魔法を使っても薬を使っても治らない。そのまま腐って壊死してしまうんだ」
「……」
「ここは『魔王城に
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