二章 追いつかない進化 - 飽食の町マーシア -
第20話 病?
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く追撃するようなことを言った。
「まったく、自称世界有数の魔法使いさんが頼りにならないから」
「申し訳ありません。しかしご存じと思いますが、攻撃魔法と回復魔法は相性がよくないんですよね。どちらも高度に習得するというのは、残念ながらこの世に生きている以上は不可能です」
アランの言うことは、言い訳というわけではない。
攻撃魔法を使う魔法使いは、基本的に回復魔法がまったく使えない。
むしろアランのように『片方が不得手ながらも両方使える』という人は非常に珍しい。
「でも、今回はシドウくんの寝顔が間近で見られたのは幸運でした」
アランはそう言うと、シドウの亜麻色の髪をいじりながら、顔をぐっと接近させてくる。
どう防衛しようかシドウが考えあぐねていると、アランの赤毛が上から掴まれ、無事に顔が引き離された。
「ハイハイ、見てて気持ち悪いんで。離れた離れた」
赤毛を吊っている手は、もちろんティアのものである。
「気持ち悪いですか? ティアさん」
「そういうのに偏見はないつもりだけど。少なくともアランの場合は気持ち悪い」
「ふむ。私の容姿に問題はないはずですが」
「だから余計本格的に見えちゃって気持ち悪いの! 不細工のほうがまだ冗談っぽくてマシ」
「……ふむふむ。ではティアさんの強い要望により離れることにしましょう」
シドウは内心でティアに感謝した。
アランのことは嫌いではないが、さすがにこのノリはきつい。
「ところでシドウくん。戦闘中にボーっとしていたという目撃情報がありましたが。本当ですか?」
「すみません。それは本当です。思いっきりよそ見してました」
「うわあ、本当だったんだ。ちゃんと反省するようにっ」
「痛っ……。うん、気を付ける」
ティアが右手でシドウのおでこを力強く叩いた。
その際に、手首の近くに着けている腕輪が目に入った。スケルトンと戦っているときに、盾代わりにしていたものだ。
先ほどの彼女の戦いぶりが思い出される。
「ティアって強いよね。なんであれで初級冒険者なんだろう」
「えっ? 何。突然」
「俺、ティアが戦っているところをきちんと見るのは初めてだった」
「あの……シドウくん。もしかして、ティアさんの戦いぶりに見惚れていて負傷したということで?」
「え、あ、あー……。見ていたのは間違いないです……。なんであんなに戦えるのに初級なのかなとか、右腕の腕輪はどうやって使うのかなとか……」
「もー、やあね。それじゃ覗きと変わらないじゃない! だいたい、シドウとアランの昇級が速すぎるんでしょ。十六歳で初級は別に普通だから!」
ティアはそう言って、またぷいっとそっぽを向いた。
そしてそのまま「トイレに行ってくる!」
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