第三十六話 葬儀その十二
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「彼女の花を贈ろう」
「黒薔薇を」
「そうされますか」
「そのうえでこの国を去る」
そうするともいうのだった。
「わかったな」
「はい、それでは」
「その様にしてです」
「この国を後にしますか」
「花を贈られたうえで」
「そうしてな」
実際にとだ、太子は側近達に話した。そして彼は丁度傍の花瓶に差してあった花を見た。それは薔薇ではなかったが。
赤、白、黄色、そして黒の四色だった。それぞれの色の花達があった。
その四色の花達を見てだ、太子は側近達にこうも言った。
「三色の花達が一つになろうとしているが」
「それでもですか」
「そう言われるのですね」
「もう一つ、黒い花もだ」
それもというのだ。
「一つになるべきだったのだ」
「その色のお花もですか」
「そうあるべきだったのですか」
「そう思った」
四色の花達は花瓶の中でまとまっている、そのうえで美しい姿を見せている。太子はその四つの花達を見て言うのだ。
「本来はな。だが今だ」
「今、ですか」
「今この時にですか」
「四色の花は一つになった」
その花達を見つつの言葉だった。
「ようやくな。それは遅かったが」
「幸いであったと」
「そう言われるのですか」
「実にな」
太子の言葉は懐かしむ様なものだった、そしてだった。
そうしたことを言いつつだ、太子はマイラに多くの黒薔薇を贈った。そのうえで大使に後を託し帝国への船に乗り込んだ。
太子が乗った船を見送ってだ、マリーは今も共にいるセーラとマリアに言った。
「信仰と立っている場所は違いましたが」
「それでもですね」
「あの方は」
「立派な方です」
こう言うのだった。
「きっと帝国も無事に治められるでしょう」
「帝国も複雑な事情の下にあるわね」
マリアがマリーの今の言葉に応えて述べた。
「実に」
「はい、ですが」
「それでもというのね」
「あの方ならば」
「必ず」
「帝国を今以上によくされます」
こう言うのだった。
「必ず」
「そうね、見事な方だからこそ」
「それが出来ます」
「国内の諸侯を抑え」
「異教徒にも王国にも勝ち」
「教皇庁に対しても」
「先んじます」
そういったことが出来るというのだ。
「ですから」
「帝国はこれからさらに強くなりますね」
セーラも言った。
「必ず」
「そうなります、王国も強くなりますが」
この国そして帝国共通の敵であるこの国もというのだ。
「それと共にです」
「帝国もですね」
「はい、あの国もです」
「強くなる」
「どの国もそうです、しかしそれ以上に」
マリーは彼等のことも言った、その彼等はというと。
「異教徒達も」
「前からかなりの強さだったけれど」
マリアは
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