第三十二話 上司の毒舌
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第三十二話 上司の毒舌
イギリスの上司はやたらと太っていて口の悪い人です。イギリスに対しても時々毒舌をかましますがそれは多くは敵国に対して向けられます。
しかも同盟国に対しても。フランスにはとりわけ容赦がありません。
「蛙は帰ったか」
「ええ、今」
イギリスは何とかフランスを追っ払ったことを上司に報告しています。上司はそれを聞いてフランスを蛙と言ったのです。
「全く。今だに青い服を着ていて」
「確かにそうですね」
「あいつは昔からだ」
ここで随分と昔話を出すのです。
「コルシカから来た小男の時から、いやそれ以前からだったな」
「ええ」
「青い服ばかりを着ている。だから弱いんだ」
「だからなんですか」
「我々を見ろ」
その巨大な胸を張って見せてきたのは。
「これが我々の色だ。青だ」
「ええ」
「ウェリントンの色だ、わかるな」
「そうですね。じゃあ戦争は我々の方が」
「いや、そうはいかない」
けれど何故かここで急に毒舌が鈍くなる上司でした。
「あいつはあれで結構強いぞ。油断するな」
「そうなんですよね」
しかもイギリスも何故かそれを認めて頷きます。
「多分今回もな。ある程度は」
「期待しますか」
そんなことを言っているうちにフランスはドイツに華麗に負けてしまいました。それを聞いたイギリスの上司は葉巻を吸いながらまた毒舌を発揮するのでした。
「蛙は蛙だな、所詮は」
忌々しげに言います。
「まあいい。ソーセージ野郎は抑えておいてアジアで挽回を」
とか言っていたら虎の子の艦隊が日本に瞬殺されました。これには流石の上司も。
「・・・・・・今は一人で泣かせてくれ」
「・・・・・・わかりました」
鬼の目にも涙というやつでしょうか。一人自室に消えて当分出て来ませんでした。
第三十二話 完
2008・1・23
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