第百四話 夜の海と花火その五
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「このワインと合いますね」
「私達が飲んでいるワインのことも把握されて」
「そのうえで、ですか」
「調理されているので」
「こんなに合うんですね」
「左様です」
「そういえば小野さんも」
僕も八条荘のシェフのこの人のことを思い出した。
「お酒のことも考えておられますね」
「そうですね」
「ただ調理をするだけでなく」
「一緒に飲むものも考えて」
「そうです」
そのうえでというのだ。
「調理されることがです」
「大事ですね」
「本物のシェフでしょう」
「そうですか」
「ですからこの赤ワインにも合うのです」
僕達が今飲んでいるそれにもというのだ。
「この様に」
「凄いことですね」
「それが出来る方がです」
「このホテルのシェフさんですね」
「そうなのです」
「わかりました」
「ではこのメインンディッシュも」
本当に美味しい、三切れどころかもっと食べたい位だ。
「頂きましょう」
「そうですね」
「パンも美味しいので」
メインの後、デザートの前のそちらもだ。フルコースなので主食はこちらだ。
「どうぞ」
「楽しませて頂きます」
「そしてですが」
畑中さんはパンの話の後さらに言ってきた。
「この晩御飯の後ですが」
「自由時間ですね」
「そうです、ハウステンボスは治安がいいですが」
「やっぱり女性の一人歩きは」
「よくないです」
こう言うのだった。
「やはり」
「そうですね」
「ですから皆様にもお話させてもらいました」
この辺りの手際の良さが畑中さんだった、とかく物事の先の先を広く見てそのうえで手を打ってくれる。本当に凄い人だ。
「夜の外出の際はです」
「単独行動はしない」
「そのことをです」
「ホテルの中だと安全ですよね」
「この中は」
流石にというのだ。
「安心出来ます」
「そうですよね」
「ですが夜の女性の一人歩きは」
「幾らハウステンボスの治安がよくても」
「してはなりません」
身の安全の為にだ。
「ですから」
「女の子ですからね」
しかも皆年頃のだ、それではだ。
「放っておいてはいけないですね」
「まことにです、義和様もです」
「僕もですか」
「どなたも一人にされない様にして下さい」
「引き続きですね」
「お願いします」
「はい、僕が管理人ですから」
八条荘のだ、殆どの仕事は畑中さんがしてくれているけれど僕にもその責任感がある。だから僕も言ったのだ。
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