第百四話 夜の海と花火その四
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「桃とアイスクリームから作った」
「そうです、奇麗なお菓子ですね」
「新婚のベッドをイメージしたそうですね」
「ワーグナーの歌劇、楽劇からヒントを得た」
「ローエングリンでしたね」
一度観たことがある、八条学園にある劇場で上演したのをだ。ただドイツ語の本格的な劇だったので言葉はわからなかった。
「あの騎士が出て来る」
「その歌劇から生まれたもので」
「それが、ですか」
「デザートです」
「そうですか」
「それをです」
是非にというのだった。
「皆様に召し上がってもらいます」
「そうですか」
「はい、そしてお酒はです」
「このままですね」
「赤ワインです」
「やっぱりデザートにはそちらですね」
「お肉と」
メインディッシュのそれもというのだ。
「それでは」
「はい、楽しみましょう」
こうしたことを話してだ、そしてだった。
僕達はワインを飲みつつだった、メインディッシュを待った。そしてそのうえだった、メインディッシュが来るとだ。
マトンの骨つき肉だった、細い骨に大きな肉が付いている胸の辺りの肉だ、それが三つ程ある。焼かれたそれにソースがかけられている。
それを身てだ、僕は畑中さんに言った。
「美味しそうですね」
「はい、香りもですね」
「マトンの香りは独特で」
「これが嫌だという方もおられますね」
畑中さんは言った。
「そうですね、しかし」
「その匂いがですね」
「好きな方はです」
「いいと言われますね」
「はい」
実は僕もそうだ、この香りがいい。
そしてだ、こう言ったのだった。
「僕も好きです」
「この香りが」
「美味しい香りですよね」
「私もそう思います」
「どうしてこの香りが苦手なのか」
「そこは人それぞれですね」
「好きな方は好きで」
畑中さんはまた言った。
「l嫌いな方はという」
「そうした香りですね」
「そうですね、では」
「食べましょう」
「このメインディッシュも」
僕は畑中さんと微笑んで話してそのうえでマトンを焼いたものを食べた、マトン本来の味が生きていてそこにスパイスと香草、そしてソースの味がした。
絶妙のバランスで一緒になっているその料理を食べつつだ、僕はまた言った。
「これはまた」
「素晴らしい味ですね」
「はい、いいですね」
「このホテルはシェフの方も一流ですから」
「この味なのですね」
「左様です」
「しかも」
ワインを一口飲んだ、するとだった。
余計に味がよくなった、ワインとお肉の味が絶妙に重なり合って最高のハーモニーを醸し出していた。
その味を味わってだ、僕はまた畑中さんに言った。
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