ケッコン協奏曲 〜赤城〜
4.提督の苦悩。そして災難
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…それが、聞いている私や電さんや集積地さんに、嫌というほど伝わってきた。
「大淀さん……」
大淀さんがポロポロと流す大粒の涙は、とても美しいが……こちらの気持ちをえぐる痛みを同時にもたらした。彼女の笑顔はとても朗らかで、彼女らしい優しい笑顔だったが、その朗らかさが、逆に私達の心をえぐった。
「今まで……任務娘として……この大淀を使って……ひぐっ……くれ……て……」
「……」
「あり……あと……ひぐっ……ごじゃ……い……ま……ひ……」
「……」
「今晩の……がい……ひゅつは……おおよ……どは……きゃん……ひぐっ……キャンセル……ひま……ひぐっ……」
「大淀さ……」
「ごめ……ひぐっ……ごめんな……ひゃぃ……ひぐっ……」
ひどい嗚咽とともにそう言った大淀さんは、涙の笑顔で深々と頭を下げた後……
「あ!」
「オオヨド!!」
「待ってほしいのです!!」
そのまま踵を返し、執務室を走り去ってしまった。後に残された私たちを、気まずい静寂が襲う。
提督は、じっと目をそらさず、大淀さんを見ていた。大淀さんが走り去ったあとも、その、見えなくなった大淀さんの後ろ姿を、目で追いかけていた。
「……赤城、電、集積地」
「はい?」
「はいなのです?」
「うん?」
ガラッという音が鳴る。提督が机の引き出しを開いたようだ。そこから何かを取り出した提督は、自身の制服の腰ポケットに、それを突っ込んだ。
「……俺は出る」
「え……オオヨドはほおっておくのか?」
「……」
「どうなんだ?」
私は、提督の顔を見た。同じく、提督も私の顔を見る。彼の目は、いつもの死んだ魚の眼差しではなかった。
「執務室を頼む」
提督はそう言い終わるやいなや立ち上がり、コツコツと革靴の音を響かせ、足早に執務室を出て行った。その腰ポケットは少しだけ膨らんでいる。さっき机の引き出しから取り出した四角いものがポケットに入れられていることが、私の視界からでもよく見えた。
「おい!」
集積地さんが提督に声をかけるが、提督は止まらない。走りこそしてないが、提督は速歩きで執務室から退室し、天龍さんドアがバタンと閉じられ、部屋に静寂が訪れた。
「行ってしまった……」
集積地さんが、ポツリとそうつぶやいた。彼女はまだ、提督の真意に気付いていないようだ。
一方、電さんの方は提督の真意に気付いているようで、優しい微笑みのまま砲台子鬼さんの元にトコトコと歩み寄り、その砲塔を優しく撫でていた。
「砲台子鬼さん、ケッコンおめでとうなのです」
『……』
「でもごめんなさいなのです。提督は、すでに心に決めた人がいるみたいなのです」
『……』
電さんの言葉を受けて、砲台子鬼さんが
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