ケッコン協奏曲 〜赤城〜
4.提督の苦悩。そして災難
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逃げおおせたという話だった。
たしかそのケースに関して、比叡さんの傷が癒えるとき、彼女の身体が眩しくも優しい光に包まれたという報告が上がっていたはずだ。
「ほ、砲台さんが……大丈夫ですか?」
今の砲台さんがそんな感じだ。砲台さんの身体は優しくも眩しい輝きに包まれ、砲台さんの身体が視認できなくなっている。そばにいる提督の、死んだ魚の眼差しだけが、光の中でブラックホールのように光を吸収しているように見えておぞましい。そして、そんな砲台さんにフラフラと歩み寄る大淀さん。
これはまずい。報告通りのこの現象は……ケッコンカッコカリ、成立だ……
まばゆい光の中で、大淀さんは一歩、また一歩と砲台さんに近づいている。光が次第に弱くなってきた。このまま砲台子鬼さんと大淀さんの距離が縮まれば、大淀さんは、確実に指輪の存在に気づく。そうすれば、察しのいい大淀さんが、ケッコンカッコカリに気付かないはずがない。
「……砲台さん」
『……』
「大丈夫ですか?」
『……』
「だいじょ……?」
砲台さんの輝きが収まり、普通に目を開ける程度の明るさになってきた。大淀さんが砲台さんのすぐそばまで迫っている。
「砲台さん」
気付かないで下さい気付かないで下さい大淀さん指輪に気付かないで下さい……。
「それ……」
「……」
「……指輪ですか?」
……ヒェエッ!? いや! まだ消失点ではありません……指輪イコールケッコンカッコカリという事実に気付かなければまだかのうせ
「ひょっとして……」
「……」
「ケッコン……カッコ……カリ……です……か?」
てぇぇえええええとくぅぅううううう!!! あなたこの状況の責任をどう取るつもりなんですかぁああああああ!!? 黙ってないでなんとか言ってくださいよぉぉおおおお!!!
「……そっか……ふふ……砲台さんと提督……そんなに、仲、よかったんですね……」
「……」
「提督……砲台さん……ケッコン、おめでとうございます」
大淀さんの声が執務室に静かに響く。彼女の声が痛い。決して大きくない、いつもの彼女らしい、とても優しく、耳触りのいい、心地よくて優しい声だ。
でも。
「この大淀は……お二人の、邪魔にならないよう、これからは……ひぐっ……」
「……」
「任務娘としてではなく……軽巡洋艦として……ひぐっ……戦闘を……ふぇ……め、メインに……ひぐっ……」
その、精一杯いつもの自分を演じようとしている、大淀さんのいつもの声が、心にとても痛い。私は、こんなに優しくて心地いい、しかし心に痛い声というものを、はじめて聞いた。彼女の失恋の辛さが……愛する人が、自分ではない人を選んだ悲しみ……愛する人のそばを離れなければいけない辛さ…
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