ケッコン協奏曲 〜赤城〜
4.提督の苦悩。そして災難
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ュッと抱きしめていた。
「電?」
「……司令官さんは、電のヒーローなのです」
「……どうして?」
「いっつも死んだ魚の目をしてて、『知らんけど』って無責任なこと言って電たちのことを煙に巻いてるのですけど、本当は、電たちのことを大切に思ってくれて、いつも見守ってくれてるのです」
電さんは、提督の耳元で優しく静かに、でも力強く、ゆっくりとそう話していた。私は最初、電さんのこの言葉は、提督を奮い立たせるためのものだと思っていた。
でも、それは誤解だった。電さんは提督のことを、本当にヒーローだと思っているようだった。彼女の次の言葉が、それを物語っていた。
「……ありがと。でも、俺は提督だよ? それが仕事だよ?」
「それだけじゃないのです。司令官さんは、自分が嫌いになりそうだった電のことを、助けてくれたのです」
「俺、そんなことしたっけ?」
「……集積地さんとの戦いのあと、電は、ロドニーさんや中将さんの“艦娘失格”の言葉が、耳にこびりついて取れなかったのです。だからあの時、電は、自分のことが嫌いになりかけてたのです」
「……」
「でも、司令官さんは言ってくれたのです。電は、自分のヒーローだって言ってくれたのです。今のままでいて欲しいって……俺の心を奪ってくれてありがとうって、言ってくれたのです」
以前……私たちが集積地さん撃破のために出撃したあの日、電さんは、提督と二人で演習場で話をしたと聞いた。その日の夜に電さんに会ったのだが、電さんは、目は泣きはらした後のように真っ赤に腫れていたが、その表情はとても晴れやかだった。何かうれしいことでもあったのかと問いただしても、『電はとてもうれしいのです』と涙目だけど上機嫌な顔で答えるだけだった。
きっと電さんは、その時のことを言っているんだ。提督が電さんに、何か特別な思い入れがあることは知っている。だからあの日、提督は電さんに何かを話し、そして電さんは、それで救われたに違いない。
「……」
「電はあの日、司令官さんのおかげで、自分のことを嫌いにならずに済んだのです。だから司令官さんは……あの日から、電のヒーローなのです」
「……そっか」
「司令官さん。子供の時、電を好きになってくれてありがとうなのです。司令官さんが電を選んでくれたから、電は今、赤城さんやロドニーさん、この鎮守府のみんなと出会えたのです」
「うん」
「何より、集積地さんや戦艦棲姫さんとも、上官が司令官さんじゃなかったら、仲良く出来なかったのです。集積地さんたちと停戦だなんて、出来なかったのです」
私には、二人の会話の詳細は分からない。でも、提督に向ける電さんの愛情は、本物だと言うことは分かる。電さんが提督にかける言葉の一つ一つが、提督にとってこの上なく優しく、彼の心に暖かく染み渡っ
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