ケッコン協奏曲 〜赤城〜
4.提督の苦悩。そして災難
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を渡す資格が……あるのかな……?」
……私は今、このサクラバイツキという男の、本質を見た気がした。
提督は、以前民間で働いていた時、社内政治の強さのみで、出世街道をひた走っていたと聞いた。私たちにはよくわからない世界だが、言ってみればそれは、妬み嫉みが渦巻く権謀術数の世界。提督は社内政治に強かったと聞くから、彼のために煮え湯を飲まされた人は、決して少なくないだろう。言ってみれば提督は、過去、たくさんの人たちを苦しめ、泣かせたことになる。
ある日提督は、そんな毎日が嫌になって会社を辞め、自暴自棄になっていた時期があると聞く。その時の経験は、今も提督に暗い影を落としているようだ。
私は、彼に対しては感謝こそすれ、小悪党やゆすり屋だなんて思ったことは一度もない。民間時代の社内政治の話を聞いた時も、『通りで……』と、提督が時々見せる底知れない恐ろしさの正体が分かって納得はしたが、それに対して、決してネガティブな感情を持ったことはない。
でも提督は、そんな自分の過去を、ずっと引きずってきたようだ。そして、自分に人を愛する資格があるのか……自分が大淀さんに指輪を渡していいのか、自信を持てないでいる。
ここで、私が大淀さんの気持ちを代弁することは可能だし、至極簡単だ。一言『彼女は、あなたを待っています』といえば済むからだ。……でも、問題はそこではない。それで、提督の心に自信が芽生えるわけではない。
かと言って、ありきたりな『そんなことないですよ』という声をかけるのも違う気がする。きっと提督は、私の声に説得力を感じることはないだろう。私自身、彼に掛ける言葉に説得力を持たせることが出来るか不安だ。
私は今、指輪の輝きを前にして小さくなっている、このサクラバイツキ提督にかける言葉を失ってしまった。私の言葉では、彼の心にこびりついた黒い汚れを落とすことは出来ない。
「司令官さん」
「ん?」
「電の前に来て欲しいのです」
どうすればよいのか私が思案していたら、電さんが提督を呼んだ。提督は頭にはてなマークを浮かべ全力で首を横にひねりながら、電さんの前に立つ。その手には、指輪が握られている。
「来たよ? どうしたの?」
「しゃがんでほしいのです」
「ほいほい?」
電さんが何をするつもりなのか分からず……だが自分の可愛い初期艦の指示なんだから素直に従うか……という心づもりなのかどうかは分からないが、疑問を隠し切れない顔色を浮かべ、提督は電さんに素直に従い、彼女の前で片膝をついてしゃがんだ。
「司令官さん。ちょっといいのです?」
「ん?」
「失礼するのです」
電さんは次の瞬間、しゃがむ提督の首に両手を回し、自分の身体を精一杯伸ばして、提督の、彼女に比べて大きなその身体を、ギ
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