縊鬼
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りの木ってなに?と無邪気に飛縁魔の後を追う縁ちゃん。…駄目だ、そっちに行ってはいけない。…そう云いたかったのに、声が出ない。飛縁魔の『気配』は声帯さえ麻痺させるのか。俺は辛うじて縁ちゃんを追った。
「最近、一緒に歩いてるのをちょいちょい見るなと思っていたのよ♪」
高いヒールを履いているとは思えないような軽い足取りで、飛縁魔が先頭を歩く。
「あの子の次の授業は…第二選択のドイツ語よね。ふふ…大真面目に朝から夕まで講義ギッシリ詰め込んで…可愛い子」
偶に学内で見かける程度の子の時間割まで把握しきっている、飛縁魔の情報網の恐ろしさよ。先に縁ちゃんを潜入させて俺を学食に足留めさせた手際といい、恐らく俺の時間割も握られている。
飛縁魔の話を聞いているうちに、彼女らがいう『新しい彼女』とやらが誰を示すのか分かってきた。奉は以前、俺たちにバスで感じる厭な気配について依頼してきた『静流さん』を『新しい彼女』と吹き込んでアシンメトリ攻撃から逃れるのみならず、きじとらさんの嫉妬をも躱すという一石二鳥をやってのけたのだ。俺を踏み台にして。
俺自身はまぁ…全く悪い気はしないが、静流さんに『ちっ…違います!誤解です!全く!全然!事実無根です!!すみませんすみません私なんかとそんな噂になって!!』とか必死に拒否られる様子を想像するだけで心が折れそうだ。100%、彼女はそうする。実際のところ、俺の事をどう思っていたとしても絶対に、よかれと思って拒否る。全身全霊をもって。凹む程。
「あら、何か元気ない?」
そしてこれは純粋な勘だが…この性悪な女怪はそれに気がついている。ただ面白がる為だけに、縁ちゃんまで巻き込んで学校にやって来たのだ。俺は極めて不機嫌な顔を作り、ぶっきらぼうに云い返す。
「俺が全身全霊で拒否られる様を、二人で眺めて笑えばいいよ…」
「つまらない男ね。…あの子、押せばいけるのに」
「断り切れずにね。そういうの一番厭だな」
「そうかなぁ…」
ふふふ…と口の中で笑って更に歩みを早める。そして静流さんがいると思われる教室のドアを開け放つ。…ああ、死刑執行の時間か…俺は軽く目を閉じてため息を噛み殺した。
「…あら」
いつも15分前には居るのに…などと呟きながら飛縁魔が教室を眺めまわす。
「あの子もさぼることがあるんだな」
「……そんなわけない」
大学じゃよくあることだろう…と云いかけて飛縁魔の横顔をちらりと盗み見た。
「何故、そんなに真顔なんだ」
飛縁魔は何度も確認するように教室中に目を走らせ、ゆっくりと口を開いた。
「今日は小テストがあるのよ。普段ならともかく、今日出席しなかったらサボりが確実にばれる。こういう少人数の教室だと、そういうの単位に関わるじゃない?」
「なに小テストまで把握してんだよ怖いよ」
「―――君たちは
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