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トシサダ戦国浪漫奇譚
第一章 天下統一編
第十四話 初陣
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すれば十分に凌ぎきれる。
 だが、この守りを北条氏規がどの位の期間維持できるかだ。史実では四ヶ月。その一ヶ月前には北条氏規も落城を意識し腹を括っていたはずだ。

「この戦が初陣と言い訳はいたしません。私の不作法をお許しください」

 俺は言い訳をせずに平伏した。織田信雄は業腹そうだったが空の杯を小姓に差し出した。小姓は素早く酒をついだ。杯に酒が注がれると織田信雄は乱暴に杯を口元に運び酒をあおった。

「明日は城攻めに必ず参加するのだぞ」

 織田信雄は俺を睨みながら言った。初陣の俺を責めても空しいだけだからな。

「謹んで承りました。右大臣様、一つお許しいただきたいことがございます」
「何だ?」

 織田信雄は訝しげな表情で俺を見た。

「今晩より韮山城を攻めることをお許しください」
「今晩?」

 織田信雄は目を細め俺のことを見ていた。俺の話に要領得ないようだ。

「深夜に韮山城の大手門に鉄砲を撃ち込もうと思います。夜でも大手門に警備の兵が詰めていると思います。そこに鉄砲を撃ち込めば敵は警戒しましょう。毎晩続ければ敵の指揮も落ちるかもしれません」
「大手門に鉄砲を撃ち込むだけか?」
「はい。その通りでございます」

 織田信雄は俺の考えを聞き終わると馬鹿にしたような目で俺を見ていた。

「勝手にしろ。夜襲をしようと明日の城攻めには必ず参加にするだぞ」

 織田信雄は座った目で俺を見ると俺を凝視した。俺の思惑に織田信雄は理解していないようだ。織田信雄に見抜かれるような計画では北条氏規に見破られるだろうな。

「分かっております。お許しいただきありがとうございました」

 俺は丁寧に織田信雄に平伏し頭を下げた。

「玉薬も鉛もただではあるまい。相模守、お前は物好きだな」

 織田信雄は呆れた声で言うと、顔を上げた俺に手振りをして「さっさと帰れ」と仕草で返事した。俺は気にせずもう一度頭を下げ去った。帰り際に俺とすれ違った織田信雄の家老らしき中年の大男が「相模守様、ご苦労をかけましたな」と声をかけてきた。

「気にしておりません。悪いのは私です。態々気にかけてくださりありがとうございました」

 俺は頭を下げた。しばし中男の男を見ていた。面識のない男だ。俺は彼に名を聞くことにした。

「お名前をお聞かせくださいますか?」
「名乗っておりませんでしたな。織田信雄が家臣。小坂雄吉と申します」
「小坂殿、私は小出相模守俊定と申します。以後お見知りおきください」

 小坂雄吉。聞いたことがない名前だ。織田信雄の家臣なら元は織田信長の家臣だろうと思う。ご同輩であった秀吉が今や天下人に登り詰め、主家筋である織田信雄に命令する状況をどう思っているのだろうか。
 俺が気にすることではな
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