第一章 天下統一編
第十四話 初陣
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党の人質の反応を見るに彼らは危機感を抱いているように思う。私の無理を飲まざる終えないほどにな」
「風魔党の地盤は箱根権現、大雄山と伝え聞いております。近江中納言様が山中城を落とせば箱根は目と鼻の先にございます」
俺は笑みを浮かべ柳生宗矩に言った。
「風魔党は山中城が早々に落ちると見ているのだろう。だから俺との交渉を早く進めたがっている」
俺は口角を上げた。
「風魔党の見立て通り山中城は直ぐに落ちる」
「殿は確信した物言いにございますね。戦は状況次第でどう転ぶか分かりません」
「必ず直ぐに落ちる。又右衛門、籠城側が一枚岩でなく争っていては長くは持たない。山中城は韮山城と違い豊臣軍の攻撃に備えた城の増強工事が途中だった。防備は万全でない。守将は恭順派と抗戦派で割れている。この状況で八万の大軍で攻められればひとたまりもない。近江中納言様は犠牲など考えず力攻めを行うはずだ」
山中城攻めでは豊臣秀次の家老が戦死している。豊臣秀次は自軍を全面に出して山中城を攻めたに違いない。豊臣秀次の主力は養子入りしていた三好家の家臣団。それに秀吉から付けられた与力達だ。中でも中村一氏は叩き上げの戦上手で山中城陥落に一番貢献したと言われている。秀吉の後継候補というだけあり名だたる武将をつけられている。俺とは雲泥の違いだ。
羨んでも仕方ない。俺はできる範囲で有能な家臣を集めるしかない。
「殿は千里眼でもお持ちのようですね」
柳生宗矩は俺の指摘した内容に感銘している様子だった。俺も十二歳の小僧がこんなことを言っていたら驚くと思う。
「得た情報を元に考えれば自ずと行き着く答えだ。情報が如何に重要かということだ」
「だから殿は長門守様を重用されるのですね」
「そうだ。だが俺は又右衛門のことも買っている」
「柳生家は忍びを抱えておりますが大和の土豪にございます。長門守様のように多くの人材を抱えておりません」
「いないなら。育てればいいだろう。私は又右衛門には組織を作る器量があると思っている。情報を集める集団は一つより二つ。二つより三つと思っている。一つの集団の情報に依存し過ぎると偏った情報になるかもしれないからな。情報が多ければ多いほどいいのだ。普段気に止めない大した情報の中にも有益な情報であることがあるからな」
俺は情報収集の重要性を熱く語った。
「又右衛門、北条征伐が終われば三千石に加増するつもりでいる。情報を集める組織を作ってみよ」
俺の申し出に柳生宗矩は驚きの表情を浮かべた。三千石は大和国柳生庄の知行と同じ石高だ。俺の粋な計らいに柳生宗矩は感動している様子だった。これで彼は困窮している柳生家の者達を呼び寄せることも可能だ。彼は今でも実家に仕送りしているようだからな。
「殿、感謝いたします
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