第一章 天下統一編
第十四話 初陣
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ない。この城へ最短で向かう経路は大手門を破ることだ。城を囲む水堀は池と見紛うばかりの規模で作られている。この水堀を超えて城に向かうことは無理がある。だが、最短経路だから短い時間で城に向かうことができるということにはならない。
北条氏規が良将なら大手門の守りを強化するはずだ。
「伝令!」
俺が叫ぶと母衣をつけた使番が素早くやってきた。
「我が軍の者達に前へ出過ぎるなと伝えておけ。決して大手門に近づき過ぎるなとな。緒戦は傍観に徹するのだ。岩室坊には大手門を守備する備を観察するように指示せよ」
使番は俺の命令を聞き終わると急いで馬に乗馬して去って行った。
狭い大手門を守るのに鉄砲はうってつけだ。だが、織田信雄も想定の範囲内だろう。
「手柄を見す見す逃されるのですか?」
雪は俺の命令に失望している様子だった。俺が怖じ気づいて二の足を踏んでいると思っているのだろう。俺は雪の反応におかしそうに笑った。
「雪、手柄を急ぐ必要はない。最後に笑うのは私だ」
俺は真剣な表情で雪を見た。ここで兵を無駄に減らすことは馬鹿げている。誰に誹りを受けようと俺は気にしない。最後に勝利したものが正しいのだ。
俺の確信した言葉に雪は俺に考えがあってのことだと察したようだ。だが、納得できない様子だ。
「雪、そんな顔をするな。雪、玄馬。役目を与える。大手門の様子を見てこい。もし、大手門が落ちそうな状況なら私に直ぐに報告しろ」
俺が二人に命令すると雪は喜色の顔を浮かべ俺に頭を下げ去って行った。
「よろしいのですか?」
俺が二人の後ろ姿を見送っていると柳生宗矩が俺に声をかけてきた。新参の胡散臭い二人組に不信感を抱いている様子だった。俺に内通しているとはいえ、風魔党の者を信用し過ぎるのは危険と考えているのだろう。
「主の器の大きさを示すには調度良いだろう。二人が信用できるかを確認する意味でもな」
「だから岩室坊様を前に進められたということですか」
柳生宗矩は俺の言葉に得心した様子だった。柳生宗章は寡黙に大手門の方向を見ていた。
「殿、雪という女はお心をお許しになりすぎることはお止めください」
柳生宗矩は真剣な表情で俺に意見してきた。彼の考えでは女忍者は危険だと考えているのだろう。時には色香や身体で男を誑かし籠絡する手段も厭わないのが女忍者だからな。俺が十二歳の小僧でも心配にもなるのも頷ける。
「分かっている。雪は初対面の私への態度と今の態度に違いがあり過ぎるからな。幾ら私の家臣になることを納得したとはいえ気持ちの切り替えが早すぎる。玄馬の反応の方が自然だ」
俺が淡々と話すと柳生宗矩も安心した様子だった。
「賢明な判断でございます」
「又右衛門、風魔
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