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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九話 獅子搏兎
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危険視している感じがあるんだけど、どうにも二人の間の空気は微妙です。今日もまたその間で居たたまれない思いをするのかと思うと……。

会議室の中は何時にも増して空気が重かったです。ヤン中佐は何処と無く不機嫌そうに、そしてヴァレンシュタイン少佐は無表情に席に座っています。
「私を第五艦隊の作戦参謀に推薦したそうだね、ヴァレンシュタイン少佐」
「ええ」

「一体どういうことかな、何を考えている?」
「勝つ事を考えています」
「勝つ事?」
ヴァレンシュタイン少佐はヤン中佐の問いかけに無言で頷きました。

「ヤン中佐、今回の戦いにおける同盟軍の目的はなんだと思います?」
「……ヴァンフリート4=2の基地の防衛、かな」
「そうですね、此処で基地を防衛し次のイゼルローン要塞攻防戦に利用する、そんなところでしょう」
ヤン中佐が頷きます。

「では帝国軍の目的は?」
「当然だが基地の破壊、或いは無害化だろうね」
「基地の存在を知っていればそうなります。しかし帝国が基地の存在を知っているという確証はありません。もし彼らが基地の存在を知らなければ……」
「同盟軍の撃破か……」

今度はヴァレンシュタイン少佐が頷きました。二人ともニコリともしません。親密さなんて欠片も感じさせないけどお互いに相手の力量に関しては認めている、そんな感じです。

「問題は帝国軍が戦闘の最中にヴァンフリート4=2の基地に気付いた場合です。帝国軍は今回の戦闘の目的を同盟軍の撃破から基地の破壊に切り替えるでしょう、そうは思いませんか?」
「……なるほど、それで?」

「その場合問題になるのは同盟軍が帝国軍の行動に適切に対応できるかです。基地防衛を忘れて敵艦隊の撃破を優先しないか……。そうなればヴァンフリート4=2の基地は危機的な状況になります」
「確かにそうだな……」

会議室に静寂が落ちました。ヤン中佐は少し俯き加減に考え込んでいます。そしてヴァレンシュタイン少佐はそんなヤン中佐を黙って見ていました。
「貴官の危惧は理解した。私を第五艦隊に送ったのは、第五艦隊は作戦目的を間違うな、間違いそうになった時は止めろ、そう言う事と理解して良いか……」
「はい」

「何故私の送り先が第五艦隊なのかな、総司令部でも良いはずだが?」
「中佐は必ずしも総司令部の受けが良いとも思えません、ビュコック提督なら中佐の意見を受け入れてくれるでしょう」
「……」

ヴァレンシュタイン少佐の言葉にヤン中佐が苦笑しました。総司令部の受けが悪い、どう見ても褒め言葉じゃないけどヤン中佐は苦笑で済ませ、ヴァレンシュタイン少佐は平然としています。

「それにヴァンフリート星系は必ずしも戦い易い場所ではありません。戦闘は混戦になる可能性があります。混戦になれば総司令部は
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